宮本百合子『伸子』を読みました。
主人公伸子の結婚生活は不幸せで気の毒であった。
伸子からイヤな男と思われて、いいとこなしみたいに描かれてる夫にも気の毒な結婚であった。
そんな男に結婚を申し込んだ伸子さんもどうかと思うし、二人が運が悪かったとしか言いようがない。
イヤな話だけど最後まで読ませるんだから宮本百合子は力のある作家だと思いました。
途中で関東大震災があるんですが、ほとんど触れてません。
「伸子は直接被災しなかった」というような文があるだけです。
夫婦の問題がこじれていて震災どころじゃなかったということでしょうが、まあそんな人もいたでしょうね。
ふつうの小説だと思ってたんですが、宮本百合子の体験をもとにした私小説というか実話小説というか、まあそんなものらしい。
となると、モデルである元夫は、こんな風に書かれて気分悪いと思いました。
元夫は再婚して子供もあるから、子供から見ても気分悪いと思いました。
ネットで調べたら、元夫は学者としては普通に業績を上げた方のようです。
伸子さんは、夫のことを学者としてもたいしたことないとけなしてます。
今となってはどうでもいいことでしょうが。
昔、「作家の近辺にいるといつモデルにされるかわからない」と、モデルにされた人が書いてました。
その人がモデルだと言われて困ったことがあるそうです。
田辺聖子さんの『花衣ぬぐやまつわる・・・』は女性俳人杉田久女を描いた作品ですが、その夫が小倉中学の先生で、私の伯父の恩師です。
伯父は小説を読んで「あれではバネさん(先生のあだな)がかわいそうだ」と言ってました。
あまりいい描かれ方をされてないようです。
というか、教師と夫ではちがって当然ですね。
絵のモデルは「似てる、似てない」くらいで、人格まで問題になることはなさそうですが、小説もモデルになるとたいへんです。
ろくでもない男として長く読み継がれたらたまりませんよ。