てっちゃんをママが車で連れてきたんですが、動いてる時は機嫌いいけど信号で止まるとぐずりだすと言うんです。
ゆうちゃんもそうだったと言ったら家内が昔Sさんがそんな話をしてたと言い出した。
高校美術部でいっしょだったS君が子供を連れてウチに来たことがあって、そのとき車が動いてるとおとなしいけど止まると泣くと言ったというんです。
家内がその時のS君の車が「三菱ギャランシグマ」だったと言ったのには驚きました。
家内は車にはまったく関心がないんです。
ベンツと軽四のちがいはなんとかわかるかなという程度。
その家内の口から「三菱ギャランシグマ」!
たまたまS君から電話がかかったのでその話をしたらS君もびっくり。
彼も車にはとくに関心はなくて必要があるから乗ってるという感じで「ギャランシグマ」のことなんかとっくに忘れてた。
「そうやったなあ。最初の車がギャランやったんや。キミといっしょに日生にスケッチに行ったなあ。また行こうや。あの時キミが旅館に免許証忘れて・・・」といらんことを言い出した。
彼のギャランで岡山県の日生港にスケッチに行ったことがあるんです。
一泊した帰り道、昼食をとったレストランで、私が旅館に財布を忘れてきたことに気づいた。
で、2時間ほどかけて取りに戻ったんです。
S君もしょ~もないことをおぼえてるもんです。
ついでに思い出した。
日生へ行く車の中で、ラジオから録音した「パッヘルベルのカノン」のカセットテープをS君に聞かせたら「なにこれ!?」と感激した。
彼はクラシック派でビートルズ、ベンチャーズ派の私をばかにしてた。
中学高校のころはテレビでアメリカの漫画をよく見てました。
「トムとジェリー」とか「バックスバニー」とか「クマゴロー」とか。
「どら猫大将」と言うのを見てたらどら猫大将がバイオリンを弾いた。
それが実に美しいメロディでなんという曲だろうかと思った。
S君に聞けばわかるかなと思って、記憶力全盛時ですからメロディをおぼえて翌日彼の前で歌った。
彼は笑って「キミ、『G線上のアリア』知らんの?」と言った。
その彼が「パッヘルベルのカノン」は知らなかった。
カタキを取った気分であった。
日生からの帰り、S君の奥さんの友達を訪ねた。
加古川だったと思います。
その女性が「市民文化教室で油絵を習い始めた」と言った。
S君が見てあげようと言ったら「わ!大先生に恥ずかしいわ!」と言いながらキャンバスを持ってきた。
東京芸大卒で大学で美術教育を教えてるんだから「大先生」でも仕方ないかと思った。
絵を一目見て「すごい!」と思いました。
「うまい!」じゃないんですけど「いい!」と思ったんです。
S君が何というかと思ったら当たり障りのないことを言っただけだった。
今の私なら大先生に遠慮しないけどその時は黙ってた。
大阪に向かう車の中で「あの絵、いいと思ったけど」と言ったら「うん、いい絵やったなあ!」と困ったような表情だった。
いろいろ思い出すもんです。