若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

要介護老人施設で

はじめまして

母が入居している施設に行った。前に行ったとき、職員さんから、かなり話のわかる男性が入居する予定だと聞いていたので楽しみにしていた。このところ、会話のできる人がなくてさびしかった。一番ましな大正8年生まれの女性Sさんは、よく話をされるが支離…

誕生日

きのう、母がいる施設に行ったらSさんの誕生パーティだった。施設は、いわゆる「グループホーム」であるが、症状が進んだ今となっては、「共に暮らしている」という感覚を持っている人はいないだろう。Sさんは87歳。グループ六人の中では一番若い。以前は…

南無大師金剛遍照

昨日、母のいる施設に行くと、一昨日Yさんが亡くなられたとのことであった。95歳。要介護老人施設であるから、いつ誰が亡くなってもおかしくない。驚きはしないし、悲しくもないが、やはりさびしい。Yさんは、いまどき珍しい、どこから見ても、典型的日本…

告別

母のいる施設に行った。Mさんが25日に亡くなっていた。享年96才。母がこの要介護老人施設に入って十年になる。はじめの三、四年は母と会話らしきものができた。母と会話らしきものができなくなってからは、入居者の「みほさん」が私の主な話相手になった。みほさ…

二胡

昨日、母のいる施設に行った。職員さんが、「ボランティアの人達が、広間で『二胡』の演奏をしています」と言った。広間に行くと、男性一人、女性五人の中年のグループが演奏しているところだった。男性が指導者のようだ。全員、キンキラキンのチャイナドレスだっ…

私の好きな写真

母がいる施設に行った。目の前の、無言無表情の母は、私の母であるようなないような、なんだか困惑させられる存在だ。ふと部屋の壁を見ると、施設の人が張ってくれたのだろう、十年ほど前の入居したころの母の写真があった。この写真は、「母だ」と思う。ま…

遺愛の品

母のいる施設に行く。2階にいたYさんという女性が、母と同じ1階に移って来られた。Yさんの部屋の前に自作の油絵がかかっていた。花の絵だ。「市民文化祭」にでも出品されたのではないかと思える、普通の素人の素朴な感じのいい油絵だ。Yさんと絵の話でもし…

私を蹴って!

昨日、母のいる施設で。先日私を指差して、「バカ!」とののしった女性、いつも怖い顔のKさんが、人形を抱いている。20センチくらいの、「あかちゃん人形」だ。Kさんはニコニコと、まるで本当の赤ん坊に対するように笑いかけ、話しかけている。Kさんの言葉は…

目の色

母のいる施設に行く。Aさんが亡くなっておられた。この間までお元気だったのにと言いたいところだが、「要介護老人施設」だから、なんとも言えない。Aさんで思い出すのは「赤ちゃんパワー」だ。Aさんは、無言無反応無表情の方だったが、家族の方が生まれ…

百人一首

季節外れの話題のようだが、母のいる施設でのことなので、そこでは、時間が極めてゆっくり流れていると言うか、止まっているというか、渦巻いていると言うか、逆流していると言うか、季節はあるようなないような感じなのである。それだけに、施設の側では季…

南無大師金剛遍照

母のいる施設に行く。広間のテーブルに習字用の半紙が置いてあった。「桜の庭」「春の小川」何枚も書いてある。署名を見ると、あの凄まじい握力の怪力女性、舌をべろんと出してヨタヨタ歩くYさんだ。ボケる前は、かなりの達筆であったようだ。「千鶴子」「ちづ子…

さびしがり

昨日母のいる施設に行った。いつも舌をべろんと出しているYさんが近づいてきた。彼女はやっと私の顔を覚えてくれたようだ。少し前までは、私はこの施設では、モテモテのウハウハ状態だったが、このところ皆さんの症状が進んで見向きもされなくなった。人気のな…

痴呆老人の世界

朝刊の書籍広告。岩波書店から「痴呆老人が創造する世界」という本が出ている。著者が「阿保順子」さん。こんなことをなんとなく面白いと感じる私は、軽薄で不謹慎な男だと思う。著者と出版社にお詫びしたい。生まれかわったら、こんなことを面白がらないよ…

いつ亡くなってもおかしくはないが

きのう、母が入っている施設に行った。ここでは「80歳」といえばまだ若い感じがする。だから、どなたがいつ亡くなられてもおかしくはない。私は2月に入ってインフルエンザになって、なかなか治りきらなかったので、きのうが1月末以来の訪問であった。その間…

きのう母のいる施設に行った。いつ来ても変わりはない。入居者の皆さんが少しずつ衰えて、ぽつりぽつりと亡くなって行く。昨日も、いつものように母は黙って車椅子に座っていた。私の仲良しのMさんは、いつものように車椅子をゆっくり動かし、私を見ると、…

複雑な日

今日は母の誕生日である。母がボケてしまってからは、私にとって複雑な日になってしまった。「おめでとう!元気で長生きしてねッ!」という気にはならない。「なんだかなあ・・・」という感じの日である。友人で、やはりお母さんがボケてしまった人がいる。彼は、い…

衝撃の告発

母のいる施設に行く。母におやつを食べさせてからMさん。Mさんは、がっくりうなだれたまま口をあけるので非常に食べさせにくい。食べながらいろいろ口走る。「帰りたい」と言っていたかと思うと、「殺される」同じ言葉をしばらく繰り返す。「弁護士呼べ!」94歳の…

は、早い!つ、強い!

母のいる施設に行く。私の仲良し、Mさんは、車椅子から微笑んでくれる。かろうじてわかってもらっているのか。おやつはカステラとコーヒー牛乳だった。母は、食べることも忘れているので、スキを見て口に入れる、という感じである。母に食べさせたり、Mさ…

忘れられるということ

母のいる施設に行く。毎週のように顔を出していると、入居しているお年寄りが顔を覚えてくれる。私の顔を見ると笑って迎えてくれる。母が私を認識しなくなって久しいが新たに私を認識してくれる人ができるとうれしい。このところ、その人たちがまた私を「忘れ…

いたみいります

昨日、母のいる施設へ行った。明道和尚がケーキを食べておられた。この人はオシャレな感じがする。90歳であるから、いまや「一見高僧風」であるが、きっとファッションにうるさい和尚さんだったと思う。ちょっと変わったベレー帽をかぶっている。着ているものも…

あいそなし

母が入居している施設に行く。最近、ますます静かである。話のできる人が減り、歩ける人が減り、寝ている人が増えて静かなのである。今日のおやつは、「煮りんご」と書いてある。他の呼び方はないのか。みなさん、黙々と食べる。中で、一番しっかりしているYさんは、口…

衰えるということ

母が入っている施設に行く。入居者の皆さんを見ていると、何年も一定の状態を維持している人もあれば、どんどん衰えていく人もある。母は、入居後一、二年現状維持、二、三年で衰えて、ここ三年ほどは現状維持という感じである。「現状維持」と言っても、ただじっと…

明道和尚

母が入居している施設に行く。ロビーに絵が二枚飾ってあった。水墨で、なかなか良い絵だと思った。一枚は、線描で男の子が二人、もう一枚は魚を描いてある。軽妙洒脱、枯淡の境地、と言った言葉がピッタリの、味のある絵である。サインがしてあるが、この字を見…

男と女

この前の土曜日に母の入っている施設に行ったら、新しい入居者がおられた。87歳のKさんという女性である。入居して一週間もたたないのに、自分の部屋も覚えておられるし、しっかりしておられるように見えた。職員さんの話では、夕方から夜にかけてが不安定…

身元確認

きのう、母が入っている施設の夏祭りで、私に出演依頼がなかったのは、去年の、サングラスと周富徳風衣裳がまずかったのだと思っていたが、今年はカラオケ大会がなかったのであった。たぶん、歌を歌える人が少なくなったからだろう。何年か前までは、しょっちゅう…

夏祭り

今日は、母が入っている施設の夏祭りである。駐車場にいろんな屋台が出て、縁日風になる。入居者たちは、浴衣を着せてもらう。浴衣を着た母を見て、うれしいかというと、正直言ってうれしいとは思わない。浴衣を着せてくれる職員さんたちが大変だなと思う。今年で…

やすらかにお眠りください

母が入居している施設に行く。Aさんが亡くなられた事を聞いた。この方も印象深い女性であった。母が入居した7年前にはまだ60代だったと思う。私が、初めてこの「要介護老人ホーム」を訪れた時、Aさんはスーツを着て、受け付け付近に立っておられた。堂々たる女…

合体文字

母のいる施設で。来月の五日が九十四歳の誕生日の吉田さんに、スタッフの女性が筆を渡して名前を書いてもらっていた。なかなかしっかりした筆さばきだと感心していたが、何かおかしい。見ると「吉田」の「吉」の字の下の部分である「口」が「田」になってる。「…

裁縫が苦手な裁縫の先生?

母のいる施設で。94歳の半分眠っているようなMさん。私の顔を見ると、ニコニコして手を振ってくれる。母は、私を見ても知らん顔である。「にいちゃん、ようもうけてるか?」「いやMさんほどじゃありません」一年ほど前までは、二人で「あんたの方が金持ち」と…

ドキッとする一言

母が入居してる施設に行く。ボケ老人の一言に、時々ドキッとさせられる。94歳の女性、Yさん。この方は、施設の職員さんに何かをしてもらうたびに、右手を上げて拝むような格好をして、「ありがとございます。ま〜、もったいない」と言われる。これは、なかなか…