若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

近江の商人

幕末の庶民達の日記に基づいて、時代を描こうとした本を読んだ。
題名、忘れました。
日記を残した一人が、近江の商人である。
名前、忘れました。

この人は、やり手の商人であり、熱心な浄土真宗の信者で、勉強家であった。
幕末、本願寺の本堂が火災で焼失したことがある。
東本願寺か、西本願寺かは忘れたが、北や南でなかったのは確かである。
その報を聞いてこの人は本願寺に駆けつけて、感想を日記に書いている。

「このような大伽藍が一瞬にして焼け落ちるとは、まことに諸行無常、この世ははかない。来世こそ頼むべきである。この焼け跡を見て、一人でもそう悟る人があれば、本堂の十や二十焼けても惜しくはない」
実に模範的作文であるが、人のものなら惜しくはなかろう。

旅先で遊女と一夜を共にするにも、一言書かずにいられない。
「遊女稼業に身を落とすのも、前世の因縁とはいえ哀れなことである。客たるもの、そこに心を致し・・・」
かましワ!何をごちゃごちゃ言うとるんじゃ。

勉強家で、若いときから本を買い集めている。
商人に学問は無用という主人が、本を隠したこともある。
自分が読んだ本のことを、周りの人に言いふらしては嫌がられるという、私に似た所がある。

この人の先輩からの手紙。
「キミが色々本を読んで、仲間に話しているのを、快く思っていない人も多いが、私は、商売に励んだ余暇に、勉強するのはいいことだと思う。ただし、私と酒を飲んでいる時に『本居宣長はこう言っている』とかいうような話をするのは止めてもらいたい」

私も気をつけよう。

この人は、蒸気船に乗って感激して、自分で北陸に商売に行く時に英国船をやとう。出航してすぐ嵐になって、イギリス人の船長が引き返そうとすると、怒鳴りつけて船を進めさせたりしている。

別の人の日記では、当時の西洋かぶれを批判している。
ひな祭り前、江戸の町を歩いていて、人形屋に「洋風雛人形」が飾ってあるのを見つけて、憤慨している。
洋風!?
金髪のお内裏様か?
十二単のかわりにローブデコルテだったのか?

それにしてもすごい!
単なる「かわり雛」ではないですよ。
尊皇攘夷」の時代である。
外人と取引するやつには天誅を加える、というような時代である。

この人形屋さんは、よほどしっかりした開化思想を持った人ではなくて、私好みの過激なおっちょこちょいだったのであろう。