若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

大きな声

母のいる施設に行く。
入居者の皆さんの症状が進んでさびしい。男性のNさん、女性のSさん、ともに80代であるが、まあ元気なほうだ。
Sさんは実によくしゃべる。元気はつらつ、いきいきほがらかである。話の中身がこれほど支離滅裂でなければ、どんなにか楽しいであろう。脈絡なく単語がほとばしり出ている感じだ。あなたといっしょですよ。え?私といっしょですか。

Nさんは、意味のある話をする。会話がなんとか成り立つ。時々大声を出す。「お〜い!」と叫ぶ。
Nさんが叫ぶと、Sさんが顔をしかめる。Sさんは大声がきらいだ。私は、Nさんが大声を出すと、お、元気あるな、と思う。

Sさんは非常に不快な表情をする。Sさんは、男が大声を出すことになれていないのか、男の大声に悩まされ続けてきたのか、どちらだろう。

Nさんはよくティッシュペーパーをほしがる。
「おーい!ティッシュペーパー!」

おーい!ちり紙!といわないところがおしゃれである。
目に不快感があるらしく、「おーい!目薬!」もよく出る言葉だ。「霧吹き」見たいな物で、目に「アルカリ水」(?)をしゅーしゅー吹きかけることもある。
職員さんが「しゅーしゅーしましょか?」と聞く。
「しゅーしゅーしてくれ」

今日、うれしかったのは、Nさんが私と同じ「オロナイン党」だということだ。Nさんが何度も、「目薬!」とか「しゅーしゅー!」とか言うので、職員さんが、「じゃ、オロナイン塗りましょか」といった。

巨大オロナイン軟膏登場。私が愛用しているオロナイン軟膏のビンの倍はある。
Nさんはオロナインを顔とはげあがった頭にぬりまくった。Nさんは大変色が白い。80代の男性としては、色白のきれいな肌といえる。私のオロナイン軟膏に対する信頼は一気に倍増した。やっぱり肌にはオロナインだ。

Nさんの横にすわって話をした。そばにいるだけでオロナインの香りがぷんぷんする。私も、香りがするほどぬりまくったほうがいいのだろうか。

Nさんに、帰りのあいさつをする。例によってNさんはひきとめる。

「もう帰るんか?もうちょっとおってーな。さびしいがな」
「また来ますからね」

Nさんと握手をしたら、Nさんの手はオロナインでべちゃべちゃであった。