整骨院に行く。
隣のベッドに、今日が初めての老人。
80前と思える男性である。
問診表を手に、院長がいろいろ聞いている。
「人工関節ですか。それと・・・うーん・・・たくさん手術してはるんですねえ」
「ワシ、手術、好きですねん」
院内爆笑。
「切った方が、早いですがな」
手術が好きなおじいさん。
いい感じだ。
帰りの駅前で、犬を連れた中年女性。
小型の、「なんとかテリア」だと思う。
この犬が、地面に腹ばいになっていた。
前足と後ろ足を、べったり地面につけて、広がりきっている。
「大の字」といいたいところだが、小さい犬なので「×」に見える。
なんだか不思議である。
犬って、こんな格好ができるのだろうかと思いながら、しばし見つめる。
午後、母のいる施設へ。
Nさんが、風呂から帰ってきた。
いい血色で、はげ頭から湯気が立っている感じだ。
「気持ちよかったですか」
「ああ、ええ気持ちダ。20分足らず、入ってました」
私の手をとって握手。
かたい握手。
皆さん、握力は強い。
とった私の手を、自分のほっぺたにくっつけて、スリスリする。
ひげがちくちくするし、気持ち悪くないこともないが、振り払うほど気持ち悪いわけでもない。
「ワシ、こうするのが、好きやねん」
「これが好き?でも、ひげが痛いですよ」
「痛い?痛いことないやろ」
「痛いですよ」
自分で自分のほっぺたをさわる。
「なるほど。こら、痛いワ」
「痛いでしょ」
「痛い。けど、泣くほどやないやろ」
「え、ま、まあ、泣くほどやないですね」