母のいる施設に行った。
Nさんの奥さんが帰るところだった。
奥さんは、私の顔を見るとうれしそうに笑った。
「おじいちゃん、大好きな兄ちゃん来はったよ」
い、いや、Nさんと私、それほど心が通い合っているとは思いませんが。
「兄ちゃんとお話してなさい。なあ、おばあちゃんの相手しにきたんや、ウチのおじいちゃんの相手しに来たんや、わからんわなあ」
Nさんが一番話が通じるので、そういうことになってしまいます。
「そしたら、ちょっと買い物に行ってきますわな」
「帰る」というと、Nさんがうるさいので、奥さんは帰るときは「買い物に行く」という。
横に座るとさっそくNさんが
「アレ、どこに行った?」
「買い物ですわ」
「買い物?どこへ?」
「・・・四條畷公設市場かな」(Nさんは四條畷の人)
「・・・ナンコウが・・・ナンコウが」
はじめ、何をいってるのかと思った。
「楠公」ですよ。
四條畷から楠正成を連想するところが、Nさんの生きた時代を感じさせる。
Nさんは、しきりに女性スタッフに、「手ェにぎらせて」と言う。
にぎるとなかなか放さないので、忙しいときはにぎらせてもらえない。
身代わりに私が手をにぎる。
「Nさん、私の手でがまんしてください」
「あかん、がまんでけん」
そういいながら、私の手を放さない。
私はヒマなので、放さないだけならいいのだが、Nさんは私の手のひらで、自分のはげ頭と顔をふこうとするので困る。
どういうつもりじゃ。
はげ頭だけなら、まあいいけど、顔はちょっとね。
母の部屋に、相田みつをさんの額がかかっている。
「ただそこにいるだけで
あなたが
ただそこにいるだけで
その場の空気が明るくなる
あなたが
ただそこにいるだけで
みんなの心がなごやかになる
そんなあなたに
私もなりたい」
なるほどね。
では、相田さんへのリスペクトをこめて。
「ただそこにいないだけで
若草しかのすけ
あなたが
ただそこにいないだけで
その場の空気が明るくなる
あなたが
ただそこにいないだけで
みんなの心がなごやかになる
そんなあなたに
私も・・・なってる(-_-;)」
(お断り:現在メールが届きません。どうなったのかわかりません。迷惑メールゼロというのは気持ちよろしい)