きのうは、乗馬クラブ。
同じ方向に帰る女性と電車で話す。
私と同じような年の人で、お互いの子供の話をするうち、彼女の息子の離婚の話になって、調停、慰謝料、いやがらせ、地獄のような二年間の話をみっちり聞かされた。
今日は、料理教室でパンを作った。
パン作りでは、三十分ほどの発酵時間が二度ある。
パン生地が発酵する間、何もすることがない。
教室がショッピングセンターにあるので、女性たちはその時間に買い物に行くことが多い。
その間、私は一人でボーっとしてる。
ボーっとするのは慣れてるからかまわない。
今日は若い女性と二人だった。
色白で清潔感のある、まじめでおとなしそうな女性だ。
彼女は、発酵時間に買い物に行かなかった。
二人で、一次発酵の三十分を待つ。
黙っているのも気詰まりである。
年長者である私から、当たり障りのない話をしよう。
「連休は、どうするんですか?」
思ったより、よくしゃべる人だった。
連休は、宮城県の実家に帰ります。
仕事で奈良に来て6年になる。
兄二人(35歳、33歳)は独身で、東京で暮らしていて、宮城には両親二人だけ。
そんなことを聞きながら、宮城県ですか、宮城県はいいとこですね、国に帰って、ご両親を安心させて上げなさい、というような超当たり障りのないことを口から出まかせにしゃべった。
彼女も、宮城はいいとこです、早く親元に帰って安心させたいです、というような超当たり障りのないことを言って、話を合わせてくれた。
そのうち、奈良に彼がいるという話になった。
「なんだ、彼がいるのか、トシは?五つくらい上ですか」
「いや、もっと。それに、彼、バツイチなんです」
「ふ〜ん、バツイチか。彼には子供がいるんですか」
「大学生が二人」
「だ、だ、大学生が二人!?」
「彼は47歳です」
「絶句!あなたは?」
「27歳です。私たち、ずっといっしょに暮らしてるんです」
「絶句!」
前妻と暮らす子供たちの学資の話、彼の事業の借金の話。
パン生地が発酵する間に、色白で清潔感のある、まじめでおとなしそうな女性と、これほどディープな話になろうとは思いませんでした。