整骨院にいく。
この整骨院では、「耳ツボダイエット」というのをやっている。
耳に、針だったかお灸だったかするのである。
施術室の一角を、カーテンで区切ってある。
「耳ツボ」担当は、受付の女性だ。
カーテン越しに会話が聞こえることがある。
「リバウンドしちゃったんですよ〜」という、深刻なような、そうでもなさそうな話が多い。
今日、私が「整骨」されてると、カーテン越しに男性の声が聞こえてきた。
男性の声が聞こえるのは初めてだ。
「植民地が・・・・」
お!?
カタイ話のようだ。
「そうなんですね」
いつもの女性スタッフが、テキトーに相槌を打ってる。
テキトーでいいです。
植民地について真剣な議論になったら、耳ツボダイエットどころじゃないですよ。
「この帝国主義のメタボ野郎!飢えた人民を搾取してブクブク太りやがって!恥を知れ!」
女性のテキトーな相槌のおかげで、そんな激論に発展することなく、その後も、「第一次大戦」「日英同盟」と言うようなカタイ言葉と、「ふんふん」「なるほどね」というテキトーな相槌がもれ聞こえたのであった。
まあ、耳ツボダイエット中らしからぬ話題であった。
帰りの電車。
向かい側の座席に、50代と思える男性一人と30代と思える女性二人の三人連れが座っていた。
一瞬、日本人じゃないみたいだな、と思った。
いや、日本人かな、とも思った。
どっちかな、と思ってたら、英語が聞こえて来た。
男性が話して、女性達が聞き役だ。
小さな声で、聞き取りにくいが聞き取りやすい英語、というか、英語だなとわかりやすい英語だ。
どこの国の人でしょうか。
電車が、生駒山を登りだして、窓から大阪平野が見下ろせるようになると、男性が女性達に指差して教えた。
女性二人は、大阪平野を眺めて歓声を上げた。
山の少ない国の人だろうか。
いや、山岳民族かな。
山から見下ろしたことがないか、平地を見たことがないかのどっちかだと思う。
男性が話し続ける。
「奈良は京都より古い都だよ」てなことを言ったのは、ぼんやりわかった。
「710年」と言ったのも、なんとかわかった。
「来年は、平城京遷都1300年祭です」と言ったかどうかはわからなかった。
日本語会話を盗み聞きするのは得意中の得意だが、英会話の盗み聞きはまだまだだと反省した。