今度の発表会では、初顔合わせのドラマーAさんと一曲やる。
K君からメールで、一昨年、K君、ドラムのIさん、ギターのT青年のおなじみのメンバーでやった、ベンチャーズの「ワイプアウト」を、ドラムだけ彼の知り合いのAさんに変えてやろうというので引き受けた。
先日、ヤマハの受付で、Aさんのことを聞いてみた。
「4月から来られてる方です」
まったくの初心者だろうか。
まったくの初心者相手もしんどい。
永遠の初心者である私が言うのもなんですが。
「いや、かなりたたける方です」
「トシは?」
「若草さんと同じくらいだと思います。ヤマハは4月からですが、ずっとバンドをやっておられるようです」
私と同じくらいの年で、ずっとバンドをやってて、かなりたたける・・・。
う〜ん・・・あまりうまい人とやるのもしんどいなあ・・・。
「Aさんは・・・全盲の方なんです」
なぬ!
全盲のドラマー!?
これはまずいんでないか。
鬼のようにたたきまくる人ではなかろうか。
リズム感抜群なのはもちろん、音感も抜群で、ちょっとしたリズムのズレ、わずかな音程の狂いにも神経質な完ぺき主義者、だったらどうしましょう。
不安になってしまった。
日曜日にヤマハに着くとすぐAさんの姿を探した。
椅子に座った姿ですぐわかった。
色々話をして、神経質な完ぺき主義者ではないみたいなので一安心した。
しかし、気を緩めるのはまだ早い。
普段は温厚な人だが、ドラムの前に座ってスティックを握ると、鬼に変身するのかも知れない。
まず一回目。
順調に終った。
鬼のようでなくて良かった良かった、と思ってたら、K君が、「今の終り方、違いますよ」という。
「あってるやろ」
「いや、違います」
「全員ぴったり終ったやん」
「鹿之助さんが終りかけたから、皆があわせたんですよ」
不本意ながら、私が間違ってることにされてしまった。
「ワイプアウト」の次の、「スモークオンザウオーター」の一回目が終わった時も、K君が、終り方が間違ってるという。
K君は、いつでも、絶大の自信を持って語るという悪いクセがある。
彼の「一見絶大の自信」にだまされてはならない。
この曲は音源があったので聞いて確認。
私が正しかった。
「ワイプアウト」も私が正しいと思うが、証拠がないと、「絶大の自信」を打ち砕くのは困難である。