インターネットで知った本です。
2008年に出版された小説で、明治29年の三陸大津波を扱ってます。
その津波の直後、東京の雑誌社から派遣された記者の活動を、事実に基づいて書いた本のようです。
記者の報告をもとに絵師が惨状を描いてます。
当時の絵が収められてますが、津波に人が流されるようす、散乱する遺体、生々しいです。
現代は、カメラの時代ですが、動画にしろ静止画にしろ、被害にあった人間を撮影して公開することはできないでしょう。
それだけに、人間を描いた明治時代の絵が、実に恐ろしくリアルに感じられます。
小説の中で、明治34年、記者が再び被災地を訪れます。
流されてしまった村の跡地に、ポツリポツリと家が建っている。
津波の被害を受けなかった地方から移住してきた人たちです。
それを見て、家を流されて高台に移った人たちもまた海辺に戻ってくる。
石碑ブームで、津波の石碑が沢山たった。
ところが、五年しかたってないのに誰も見向きもしない。
明治37年に、また記者が訪れると、高台から海辺へ移る人の数は増えている。
入江だったところを埋め立てて新しく村ができている。
記者は、二万人の犠牲者を出した大津波を忘れてはならない、記録して伝えていこうと決意して、雑誌社をやめます。
最終章は2007年ですが、度重なる津波の被害を受けて、巨額の費用で建設された巨大な防潮堤の海側に町ができている。
「大切なことを伝えようと精一杯の努力をしてきた人たちがたくさんいたはずなのに、それでも人間は同じ過ちを繰り返してきたのだ。」
「地震学者は、この地域を大規模な津波を伴う大地震が襲う確率を、99パーセントと予測している。もう遅いのかもしれない。」
こういうのを読むと、う〜む〜、とうなるしかないですね。
人間は忘れっぽい。
我が身に起きないと、特別に忘れっぽい。
それが人間だ、と澄ましてるわけにもいきませんが。