肺炎ですから、レントゲンを撮ったら肺に影があったというのはわかります。
酸素が足りてないから、酸素吸入というのもわかります。
肝臓の数値が悪いというのがちょっと気持ち悪かった。
担当の先生の話では、抗生物質のせいかなということでした。
担当の先生は、若くて賢そうな顔の女医さんでした。
若いといっても、10代20代というのじゃありません。
私にとって、50歳というと十分若いです。
そういう範囲での若い女医さんです。
最初の日、しんどいのに車椅子で検査に引っ張りまわされた。
検査がすんで病室に入ったときほっとしました。
酸素吸入と点滴をしながらゴホゴホゲホゲホとベッドに横たわってると、重病感が押し寄せてきた。
家内が心配そうにすわってるし、このまま死んでもおかしくないような気がしてくる。
なんせ初めての入院ですから気分がハイになってそこまで行ってしまう。
しばらくすると、右目が痛くなってきました。
なんかしみる感じで非常に痛い。
涙が出てくる。
なんだろうか。
酸素吸入の酸素が鼻から目に噴き出してるのじゃないか。
点滴が目に回ってるのじゃないか。
肝臓の数値と関係あるのじゃないか。
あれこれ考えてたら、左目も痛くなってきた。
家内が、両目とも真っ赤だという。
そこへ、若くて賢そうな顔の若い女医さんがやってきて、現状とこれからの治療について説明してくれた。
顔だけじゃなくて話ぶりも賢そうである。
説明がすんだところで、目が痛いと訴えた。
「ああ、両眼、充血してますねえ・・・。洗いましょう!」
う〜ん、これからまた眼科に行って洗浄か・・・・。
「先生、眼科に行くんですか?」
「いや、ここで」
「ここで???ここでって、どこで?」
「そこで」
若くて賢そうな顔の女医さんが指差したのは洗面所であった。
水道で洗えってか?
私の両眼充血を、えらく軽く扱ってくれるじゃないの。
「あのね〜女医さん。私は、肺炎で緊急入院した患者なんですよ。点滴して酸素吸入して肝臓の数値が悪いんですよ。その私の両眼が真っ赤に充血してるのに、洗面所の水道で洗えって言うんですか。せめて富士の湧き清水とか・・・」
「洗いましょう!」
女医さんは、問答無用とばかりに洗面所の水道を指さしながらクールに言い放った。
ムカッとした私は顔を洗ってしまった。
女医さんは、「若草さん、顔じゃなくて目を洗うんですよ」と言った。
洗面所の水道で両眼を洗ってタオルで顔を拭いたらあら不思議。
すっきりさっぱり痛みが消えましたよ。
女医さんは、「まず水洗い!」と言い捨てて、白衣の裾を翻し、病室から去ったのであった。