このトシまで読む気のしなかった『夜明け前』を読む気になったのは、「キンドル無料本」だからです。
我ながらこれほど「タダ!」に弱い男とは思いませんでした。
「木曽路はすべて山の中である。」
有名な書き出しくらい知ってます。
つかみオッケーという感じですね。
同じく有名な書き出しでも「トンネルを抜けると雪国であった。」は「トンネル」がイマイチ。「木曽路」とくらべると「トンネル」は弱いです。
タダなら読もうと思って読み始めたんですが、おもしろかった。
一気に読みました。
一読巻をおくあたわず、と言いたいとこですがキンドルですので、一読キンをおくあたわず。
幕末から明治にかけての激動の時代を生きた男が主人公なんですが、設定がうまいと思います。
木曽の旧家の跡取り息子なんで、「激動」の真っただ中にいるわけじゃない。
「激動」が東から西から、木曽の山中にぼんやりぼつぼつ伝わってくる。
ぼんやりぼつぼつ感じてるうちに本人が「激動」してしまう。
どんな「激動」かというと、「侍と坊さんを倒せ!」というような「激動」です。
これまで侍と坊さんにひどい目にあわされた、ミカドと神主ならだいじょうぶ!と思っちゃった。
ところがよけいひどいことになってしまった。
なんじゃこれは!
呆然として右往左往するうち気が狂う主人公のモデルが藤村のおとうさんだそうです。
立派なもんです。
気が狂ったお父さんが立派なのじゃないですよ。
立派なのは小説ですよ。
当時の世の中について勉強しなければ何のことかよくわからんので『宿駅』とか『日本人と参勤交代』とか買ったのでタダではすまなかったのがくやしい。