録画してあった映画を見ました。
「歩く」というのはかなり刺激のない題名です。
エンエンと歩き続ける哲学的な映画なのかと思いました。
ちがいました。
刺激ありすぎ。
歩くと言っても道を歩くんじゃないんです。
綱渡り芸人が綱の上を歩く。
その綱がどこに張ってあるかというと、ニューヨークの世界貿易センター双子ビルの地上411メートルの屋上に張ってある。
そのロープを歩く。
これ、歩くって言うんか?
私みたいに高いところが苦手なものにとっては刺激あり過ぎの映画でした。
映画を一気に見たのは久しぶりですが、心臓に悪い。
1974年に実際にあった話なんですね。
フランス人のヘンな男が主人公です。
子供のころから綱渡りにあこがれて、パリの広場なんかで綱渡りや曲芸をして生活してた。
綱渡り青年は、歯科医院の待合室で手にした新聞で、世界一の高さの世界貿易センタービル建設の記事を読んで「これだ!」と叫ぶ。
その準備としてノートルダム寺院の塔やオーストラリアの橋の上で綱渡りをした。
そして協力者を集め始める。
パリで何人か、ニューヨークで何人か。
計画では、ひとつのビルの屋上から向かい側に弓でひもを届けてそのひもにつないだワイヤーを張ろうと言うんです。
ビルに忍び込んで夜中の間にワイヤーを張って、早朝に渡る計画です。
綱渡り青年がビルの様子を調べるために関係者のふりして入って行ったら、スーツ姿のものすごい八の字ひげの男に声をかけられた。
「おい!君はこんなところで何をしてるんだ!」
男はこのビルの保険会社で働くサラリーマンで、なんと、パリに旅行した時青年の綱渡りを二度見てて顔をおぼえてたんです。
えらいこっちゃ!
しかし、このビルで働く男を仲間にできたらラッキーである。
青年は必死に説得する。
男ははじめのうちそんな馬鹿なことできるわけないと思うんですが、話を聞くうち、ヘリコプターで調査もしていてかなり緻密な計画だし、何と言っても綱渡り青年の熱気に参ってしまうんです。
この話で一番不思議なところです。
エリートサラリーマンがフランスの綱渡り青年のほとんどクレージーと言える犯罪的計画に手を貸す。
もう一つ不思議なのは、保険会社のサラリーマンがとんでもない八の字ひげをはやしてることですが、このひとの写真を見たらほんとにはやしてます。
この人は、まともに勤め上げてリタイアして悠々自適の生活のようです。
映画は実に単純な話で、暴力も裸もない。
今はない世界貿易センタービルが舞台なんですが、映画のなかではあるとしか思えない。
ワイヤーが張ってあるとしか思えない。
青年が渡っているとしか思えない。
手に汗握りっぱなし。
映画では、警察官が屋上に現れて青年にいますぐやめろと説得するんですが、青年はくるりと背を向けてまたワイヤーを歩いていく。
歩いていくとそっちにも警官がいるので青年はまたくるりと背を向けて歩き出すので、見ていて、も~やめて!と叫びたくなる。
実際には青年は45分間8往復してワイヤーの上でひざまずいたり寝転がったりしたそうです。
もう知らんわ。
逮捕されたけど罪にはならなかったそうです。
誰もけがせずに良かったです。
とにかく、もう知らんわとしか言いようのない映画であった。
つかれました。