きのうNHKニュースを見てたら、衆議院予算委員会で安倍首相が、学校の9月入学について「前広に検討したい」と語ったという字幕が出ました。
「『前広』?なんだこれは?」と思いました。
「前向きに検討」のまちがいじゃないかと思ったんですが、アナウンサーが「まえびろに」と読んだので「書きまちがったのをそのまま読んでしまったのかな」と思いました。
画面が予算委員会の映像になって、安倍首相はたしかに「まえびろに」と言ってました。
聞いたことない。
私が持ってる電子辞書の四つの国語辞典のうち二つに出てました。
出典としては二つとも近松門左衛門の『長町女腹切(ながまちおんなのはらきり)』があがってました。
例文は「前広に手形せうため呼びにやった」。
こんなもん「例文」とか「参考」とかになるんか。
ウチにある紙の国語辞典二つには出てませんでした。
ということは一般的な言葉じゃない。
義太夫節の世界ですよ。
安倍首相は義太夫が趣味なんですかね。
似合いそう。
ネットで調べました。
ネットの国語辞典も「前広」は『女腹切』に出てくると紹介してます。
「前広」って『女腹切』にしか出てこない言葉なのかと思ったら、ちがいました。
厚生省の官僚で宮城県知事だった浅野史郎さんが「『前広』はお役人言葉です」と紹介してます。
「時間的余裕を持って」という意味だそうですが、浅野さんは気に入ってるそうです。
浅野さんは「お役人ことば」として「ご如才なきことながら」というのも紹介してます。
「すでに十分ご承知とは思いますが」という意味だそうで、これも浅野さんは「この表現のほうがかなり気が利いている」と言ってます。
こういう人がいるから困ります。
まあ、隠語みたいなのをつかうとその筋の玄人になったみたいな気がしてうれしいんでしょうけど子供じみてます。
その世界だけに通じる微妙な意味を伝えやすいということもあるかもしれないけど、使うのはその世界だけにするべきです。
安倍首相は義太夫ファンだったので近松の『女腹切』で知った「前広」という言葉をつい使ってしまったんじゃなくて、お役人が書いた答弁書を必死に読んだだけだった。
アタマ悪いと思います。
答弁書を書いたお役人もそのまま読んだ安倍首相もアタマ悪い。
国会ですよ。
仲間内でしゃべってるんじゃない。
できるだけ「義務教育修了」でわかるようなふつうの当たり前の言葉使いを心掛けるべきだと思います。
これはかなり難しいと思います。
口から出まかせにカタカナを使ったり難しそうな言葉を使って煙にまくつもりがまかれてしまったりするより難しい。
がんばれ!
ネットで「前広」を調べてたら、「前広便座」というのが出てきた。
介護用品みたいです。
ほかにこんなのも出てきました。
「少し前広島風お好み焼きを食べたんですが、あれはお好み焼きじゃないでしょ」
これ、わかりますか。
「前広」で検索して「少し前広島風お好み焼きを食べたら」が出てくるのが不思議です。
AIもまだまだですね。
安倍首相退任後、私は「安倍首相」というと、「前広」「前広便座」「少し前広島風お好み焼きを食べた」を思い浮かべることになると思います。
いい思い出だと思います。