ヤジはやめられない、といっても安倍首相の話ではありません。
「トラキチ」と安倍首相をいっしょにしては申し訳ないとは思わないけど、ここは「トラキチ」の話です。
プロ野球が観客を入れて試合をするようになった。
コロナ対策として大声での声援はしないということだったのに、甲子園球場で「トラキチ」が連日大声でヤジを飛ばしてヒンシュクを買ってます。
放送でやめるよう言われてもやめないそうです。
ネットでの反応は、やっぱりね、というのが多い。
関東の球場では拍手だけだそうです。
いつごろから「トラキチ」は出現したのであろうか。
高校時代の友人で「トラキチ」代表のF君は、最近の甲子園は野球を見に来てるんじゃなくて騒ぎに来てるのが多いとこぼしてました。
子供のころ甲子園にはよく行きましたが、試合に夢中だったからか、ヤジの記憶はありません。
ヤジの記憶は大阪球場です。
南海ホークスとどこかの試合です。
私の隣の席が家族連れで、夫婦と小学生の女の子だったんですが、試合が始まるとお父さんが大声でやじりだした。
女の子が泣きそうな声で「おとうちゃん!やめて!」と訴えた。
またお父さんが大声でやじって女の子が泣きそうな声で訴える。
娘の度重なる訴えにお父さんのヤジは徐々に小さな声になって行った。
小さな声でやじりつづけた。
ヤジってやめられないんだなあとしみじみしました。
当時のプロ野球で、口汚いヤジ、グラウンドに物を投げ入れる、選手のバスを取り囲むなどガラが悪いので評判だったのは、中日ドラゴンズの中日球場、広島カープの広島球場、西鉄ライオンズの平和台球場で、甲子園は入ってなかったんじゃないでしょうか。
いや、思い出した。
甲子園もガラは悪かった。
大学時代、トランジスタラジオで甲子園の阪神巨人戦を聞いてたんです。
巨人が勝って、ヒーローインタビューは高田選手でした。
観客席の前でインタビューを受ける高田選手の後ろから大合唱が起こった。
「高田のアホよ!高田のアホよ!」
完全大阪アクセントの間抜け大声大合唱です。
「♪たあかだ~のあ~ほよ!たあかだ~のあ~ほよ!」
「それでは今日のヒーローインタビュー、高田選手です」
「♪たあかだ~のあ~ほよ!たあかだ~のあ~ほよ!」
「高田さん、8回ツーアウト満塁の場面、どんな気持ちでバッターボックスに入りましたか」
「♪たあかだ~のあ~ほよ!たあかだ~のあ~ほよ!」
「どんな球が来てもくらいついて行こうと思ってました」
「♪たあかだ~のあ~ほよ!たあかだ~のあ~ほよ!」
「打ったのはフォークだったと思うんですが」
「♪たあかだ~のあ~ほよ!たあかだ~のあ~ほよ!」
「あそこはフォークしかないと思ったんで狙ってました」
「♪たあかだ~のあ~ほよ!たあかだ~のあ~ほよ!」
「それまで三振二つでタイミングがあってないようでしたが」
「♪たあかだ~のあ~ほよ!たあかだ~のあ~ほよ!」
「チームには迷惑かけてたんで必死に振りました」
「♪たあかだ~のあ~ほよ!たあかだ~のあ~ほよ!」
インタビューの間中、「♪たあかだ~のあ~ほよ!たあかだ~のあ~ほよ!」がエンエンと続いたのであった。
聞いていて、この人たちは本当に楽しいんだろうと思いました。
生きる喜びがビンビン伝わってきました。
ベートーベンの『歓喜の歌』に匹敵する喜びあふれる合唱であった。
あんまり楽しそうなので私もつられてトランジスタラジオの前で「♪たあかだ~のあ~ほよ!たあかだ~のあ~ほよ!」と叫んでしまったのであった。
50年以上前のことですが、この場をお借りして高田選手におわびしたい。