イギリス障害競馬最大のレース「グランドナショナル」というのを知ってユーチューブで見てそのすごさにびっくりしました。
アマゾンで見たら「グランドナショナル」についていろんな本が出てます。
私好みの本を買いました。
クリス・ピット著『グランドナショナル敗者列伝』。
競馬ジャーナリストの著者が、戦後のグランドナショナルに出場して勝てなかった騎手にインタビューしてまとめた本です。
グランドナショナルで勝った騎手と馬については語りつくされているが、敗者については語られることが少ない。敗者にも語るべきことがあり聞くべきことがあるはずである。直接話を聞ける戦後の騎手に絞ってインタビューした。
原題は『敗者に聞け』というような意味で、イギリスの詩人ジョン・メイスフィールドの物語り詩の一節です。
「敗者に聞け
彼らこそ真理をつかんだもの
それは悲しみより深く若さより強い」
このメイスフィールドの詩もグランドナショナルを素材にしたものだそうです。
本の第1章は戦後再開されたグランドナショナルの敗者である騎手のビル・バルフィと馬のエルシック(発音は?ですElsich)です。
グランドナショナルが開催されるエイントリー競馬場は、戦時中米軍に接収されてノルマンディ上陸作戦の兵站基地になっていたそうです。
接収が解除されるやすぐさまグランドナショナルが開催された。
このエルシックという馬が「イギリス障害競馬史上最低の馬はだれか」と言う話になるといつも名前が出る馬なんです。
そんなこと話題にするなよと思いますけど。
1946年に出場して第1障害でこけた。
イギリスにはいろんな賭けがあるようですが、このとき、エルシックが勝ったらじゃなくて完走したら250倍の配当だったそうです。
この年36頭出走で完走は6頭です。
騎手にとってグランドナショナルの第1障害でこけたというのは一生忘れられない思い出らしい。なにせ障害は30あるんですからね。
第1障害でこける馬はたくさんいます。
だからエルシックも第1障害でこけたからと言って最低というわけじゃない。
それにグランドナショナルに出るには資格がいるんです。
「距離3マイル以上の障害レースで3位以内に入ったことがあるか、賞金獲得額500ポンド以上」
もちろんエルシックはこの資格を満たしてます。
一度だけ3マイル以上のレースに出て3位になってるんです。
ただし、その時の出走馬は3頭で、圧倒的に引き離された3位だったそうです。
レース経験は豊富なんですがたいがいこけてる。
こけなくても途中棄権とかジャンプ拒否とか、ほとんど完走したことがない。
こういう馬をレースに出すこと自体がおかしいんですが、馬主がおかしな人だった。
グランドナショナルのあともこけてもこけても出し続けてたんですが、1947年ついにイギリス障害競馬委員会が「今後エルシックの出場登録を受け付けない」と馬主に通告してエルシックの競馬生命は終わった。
長生きしたようです。
騎手のビル・バルフィもぱっとしない成績のまま間もなく引退してフォークリフトの運転手として過ごしやはり長生きした。
テレビなどで「史上最低の馬」が取り上げられるといつもビル・バルフィに声がかかってエルシックの思い出話を披露したそうです。
いい話なのかどうかよくわからん。