言いたくないけど暑いです。
言われなくてもステイホームです。
本でも読んでよう。
緑陰の読書なんて我が家の緑陰ではムリ。
というか日本の緑陰ではムリじゃないかと思える暑さです。
危険な職業はいろいろありますが、障害競馬の騎手もかなり危険です。
『グランドナショナル敗者列伝』を読んでてそう思いました。
イギリス最大の人気レース「グランドナショナル」の裏話みたいな本ですが、落馬、転倒、骨折は当たり前です。
骨と言ってもいろいろある。
腕の骨、足の骨、あばら骨、鎖骨、背骨、腰骨、尾てい骨、あご、頬、鼻、頭、読んでるだけで恐ろしい。
ある騎手が引退する時に、「自分の意志で引退できる私は運がいい」と言ったほど「落馬即引退」が多い。
落馬で引退できるのはまだいい。
騎手も馬も命がけです。
毎年動物愛護団体が「グランドナショナル」の廃止を求めて激しい抗議行動を行ってるそうです。
馬のためにですよ。
騎手は危険承知だから。
動物愛護団体に言い訳してる人もいます。
ケガする馬もいるし死ぬ馬もいるけど、競走馬は大抵の人間より大切に扱ってもらってる。
なるほどね。
数ある障害レースの中でも「グランドナショナル」は約7200メートルという距離の長さと30という障害の多さで特別苛酷である。
障害は「トウヒ」という針葉樹をびっしり植え込んで作った生垣です。
高さは1メートル50くらいで、幅は1メートルほどだけど障害の前に溝があったりしてとにかく大ジャンプしなければ飛び越せない。
障害に使う「トウヒ」は湖水地方から運んでくるんですが総量150トンと言うんですからものすごい。
レースの前3週間ほどかけて作る。
馬から見ても騎手から見ても心が折れるほどでかく見える。
ある騎手は、障害に向かって走っていくと、ぐんぐん障害が大きくなってどんどんこっちが小さくなる気がしたと言ってます。
またある騎手は、「私は学校が大キライだったけど、グランドナショナルの障害に向かって走ったときは学校で勉強してるほうがマシだと思った」と言ってます。
別の騎手は「家を飛び越してるような感じだった」と言ってます。
馬がジャンプ拒否することが多いというのもわかります。
着地に失敗して落馬するとどうなるか。
馬術競技会の障害は1頭だけで走るから落馬しても「落ちた」というだけの話です。
競馬は恐ろしい。
落馬したところへあとの馬がどんどんジャンプして飛び降りてくる。
踏みつぶされる。
「グランドナショナル」はだいたい40頭ほど出場する。
先頭を走ってて落馬したらあとから40頭ほどがやってくる。
これはこわい。
そういう経験をした騎手が「地獄だった」と言ってます。
落馬して地面に転がった騎手の耳に雷鳴のようなひづめの音が聞こえてくる。
障害はびっしり植え込んだ生垣だから向こうは見えない。
ドドド~ッと音が大きくなったと思ったら頭上を次々に馬が飛び越えていく。
どうすることもできませんよ。
40頭足らずの馬のはずだけど400頭ほどに思えたそうです。
一瞬の出来事のはずだけど永遠に続くように思えたそうです。
奇跡的にけがはなかった。
これが毎日のお仕事と言うんですから私にはムリ。