若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

『テキサス』

録画してあった映画『テキサス』を見ました。

1966年のハリウッド西部劇。

『テキサス』という単純明快な題名に「本格的西部劇をお目にかけよう」という監督の意気込みを感じました。

「本格的西部劇」とはなにかも知らずにこんな書き方をするのはよくないですが。

 

始まるとすぐ出演俳優の名前紹介ですが、「ディーン・マーチン」「アラン・ドロン」と出たので、これは本格的西部劇ではなさそうだと思いました。

次に題名が出たら原題は『テキサス・アクロス・ザ・リバー』だったので、シンプルきわまりないそのものズバリのタイトルから監督の意欲を感じてしまった私の立場はどうなるのと思った。

「川向こうのテキサス」と訳すと本格的西部劇じゃない感じがよく出ると思います。

「川向こうのテキサス」とは他人行儀というか突き放したような感じですが、時代設定がテキサスが合衆国の州になる直前の話なんです。

映画はルイジアナから始まるのでテキサスは川向う。

 

最初の場面は「風と共に去りぬ風豪邸」での結婚式です。

豪邸のお嬢さんとアラン・ドロンが結婚する。

アラン・ドロンが「スペインの貴族」という設定にかっくんとなる。

フランスの人気俳優アラン・ドロンをわざわざハリウッドに呼んでなんでフランスの貴族じゃなくてスペインの貴族をやらせるの?と不思議に思うのは素人の浅はかさ。

理由はすぐわかります。

 

このお嬢さん、アラン・ドロンの前には騎兵隊員と結婚の約束をしてたし、アラン・ドロンの後はディン・マーチンにすぐなびくという困ったお嬢さんです。

 

さて、豪邸でなんかどたばたしてるうちアラン・ドロンがその騎兵隊員を「過失致死」みたいなことになって馬に乗って逃げだす。

騎兵隊員もまさかここで死ぬとは思わなかっただろうというようなあっけない死に方で気の毒である。

 

逃げていく途中でむこうから馬に乗った赤いシャツの男がやってくる。

アラン・ドロンは着ていたスペイン貴族服と赤シャツを交換する。

なんで交換するのと思うのは素人の浅はかさ。

理由はすぐわかります。

 

しばらくしてアラン・ドロンが水辺で赤シャツを脱いで上半身裸になって顔を洗う。

顔を洗うのになぜ赤シャツを脱いで上半身裸になるのかと思うのは素人の浅はかさ。

理由はすぐわかります。

 

アラン・ドロンが顔を洗ってるところへ突如凶暴そうな牛が一頭登場。

あまりに唐突すぎて唐突感がないのが不思議である。

ハッとしたアラン・ドロンがあわてて赤シャツを着ようとして、わざとのようにひらひらさせる。

どう見ても赤シャツを牛に向けてひらひらさせまくってるとしか思えない。

当然、牛、興奮。

闘牛が始まる。

この闘牛のために、アラン・ドロンはスペイン貴族でなくてはならず、貴族服と赤シャツを交換しなければならず、顔を洗うのに赤シャツを脱いで上半身裸にならなければならなかったのかとこれまでの疑問が一気に氷解。

これほど手がこんでいながら単純な話も珍しいのではなかろうか。

 仕込みに手間をかけて見た目は単純という京料理の極意のような映画と言えば当たらずと言えど遠からず。

 

インディアンの部族会議ではたばこの回し飲みでむせ返るし、出陣前の踊りは典型的エンヤトットだし、老酋長がたいまつを持っておごそかに攻撃を命じたと思ったらたいまつの火が羽根飾りに燃え移るし、呪医も神秘的インディアン女性も出るし、総攻撃の場面は同じフィルムを使いまわしてるので、あれ?巻き戻しになったのかと思うし、監督の「これ、西部劇なんで出演は先住民族じゃなくてインディアンです」という居直りを感じます。

 

居直りの西部劇、いいんじゃないでしょうか。