アメリカの第18代大統領ユリシーズ・グラントの『回想録』を読んでます。
軍人だったからしかたないけど戦争の話ばっかりです。
グラントは士官学校を出ると間もなく対メキシコ戦争に従軍した。
1845年、アメリカはメキシコ軍を挑発して戦争に持ち込もうというえげつない作戦を立てる。
エンエンとその話が続きます。
どこまで進軍してメキシコ軍と戦って、という話はおもしろくない。
グラントが海軍の船を見た時の話なんかはおもしろい。
初めてスクリューで動く船を見たんです。
それまで見たのは帆船か、蒸気船でも外輪船だけだった。
いっしょに見ていた陸軍の将校は「あの船はどうやって動いてるんだ!」と叫んだそうです。
グラントはメキシコとの戦争を「正義のかけらもない恥ずべき戦争」と断言してます。
「ヨーロッパの専制君主と同じように、領土拡張欲にかられた大国アメリカが弱小国メキシコにしかけた不法な戦い」だと言ってます。
はっきり自分の意見を言ってえらいです。
メキシコ戦争のアメリカ軍指揮官はザカリー・テイラー将軍で、立派な軍人としてグラントも尊敬してます。
テイラー将軍は質素な人で儀式ばったことが大嫌いだった。
服装もかまわず、勲章をつけるのも嫌いでどうかすると階級章もつけないことがあるほどだった。
礼服なんか着たこともなかった。
メキシコ戦争の最中に、アメリカ海軍の指揮官がテイラー将軍を表敬訪問したいと言ってきた。
テイラーは困った。
「海軍さんは儀式ばったことが好きだからなあ。服装もTPOとかいってうるさいし、勲章なんかつけるられるだけつけてくるだろうな~。わざわざ来てくれるんだから、それなりの格好しないと失礼だろう」
で、しぶしぶ礼服を引っ張り出してブラシをかけまくってピカピカにして勲章もじゃらじゃらつけて待ってた。
一方、海軍将校の方はテイラー将軍の礼服嫌い勲章嫌いをよく知ってた。
「対メキシコ戦争最高指揮官への表敬訪問だから本来は第一礼装で行くべきだが、ここは将軍に敬意を表して思い切って私服で行こう。」
で、当日、礼服に勲章じゃらじゃらのテイラー将軍のところへ、海軍将校がカジュアルな私服で現れたので、相手を一目見るやおたがい非常に驚いてとまどって焦って困惑して気まずい思いをして「イヤイヤど~もど~もじつはまったくのところ」としどろもどろであったそうです。
このテーラー将軍はメキシコ戦争を勝利に導いて国民的人気を得て大統領になってます。
グラントは南北戦争で北軍を勝利に導いたことで大統領になってる。
アイゼンハワーは第2次大戦を勝利に導いた将軍として人気が出て大統領になってる。
ひとつのパターンなんですね。