久しぶりで額縁屋のお兄ちゃんが来ました。
お兄ちゃんといっても50歳くらいだと思いますが、30年以上の付き合いなんで「お兄ちゃん感」が抜けない。
この人はひとことで言うと「ヘンコ」です。
「ヘンコ」とはどんな人かと聞かれたら「額縁屋のお兄ちゃんみたいな人」と答えるしかない。
商売気がないという人が多い。
たしかに、なじみの私が店に行っても、こっちから声をかけるまで知らん顔のほったらかしです。
客の相手をしようと言う気はまったくない。
しかし、ひとたび額縁選びに入るや瞬間的に商売熱心モードに「ヘ~ンシン!」。
ちょっとやそっとでは買わせてくれない。
客の身になって選ぶなどと言うなまやさしいもんじゃないんです。
絵になったつもりと言えばいいのか、額縁になったつもりと言えばいいのか、アヤシイ雰囲気になります。
パターンは決まっていて、「背景の色に合わせて選ぶ」「人物の顔に合わせて選ぶ」「服装に合わせて選ぶ」の三択です。
これをぐるぐる回る。
私が「じゃあ、背景に合わせてこれ!」と言うと、「いや、しかし人物の顔に合わせると・・・」となって、「じゃあ、人物に合わせてこっち!」と言うと、「いや、やっぱり服装に合わせると・・」。
エンエンと繰り返す。
一番悲惨だったのは、エンエンと繰り返してやっと決まったと思ったら、「す、すみません。その額、この絵のサイズはないんです」と言われたときです。
きのうも私が絵を持って店に行くというのに、「大きい絵を持ってきていただくのは・・・」と言ってウチに来てくれたんです。
完成したマリア様の模写を見せたら、「う~ん」とうなった。
さあ、どうくる!と身構えました。
「あの、カトリックとプロテスタントではですね」と言い出したのでカックンとなった。
背景も顔も服も飛び越えてそう来るとは思わなかった。
いつもより一層複雑な額縁選びになって一時間以上ああでもないこうでもないと押したり引いたり。
家内が時々顔を出してニヤニヤ笑ってましたが、お兄ちゃんが帰ってから「いつものパターンやね。決まったと思ったら一からやり直しやね。おつかれさまでした」とねぎらってくれました。