「お国訛り」の話です。
『英語話し方教室』を読んでたら「お国訛り」が出てきた。
というか、「標準英語」が取り上げられてた。
考え方自体は昔からあったけど具体化したのは1920年代にラジオ放送が始まってからのようです。
BBCが全国放送を始めるにあたって、アナウンサーはどういう英語で話すべきかが問題になった。
で、昔からあった考え、「ロンドンに住んでいるオックスフォードかケンブリッジを出た裕福な人の英語がいい英語」ということになった。
理由の一つは、「そういう人しか受信機は買えない」ということだったらしい。
アナウンサーを採用するのにその基準で選んだらごく少数しか合格しなかった。
で、特訓して「標準英語」をたたきこんだ。
全国放送が始まると苦情が殺到した。
「スコットランドではスコットランドなまりじゃないとおかしい」
「ウエールズのラジオから標準語が聞こえるのは気持ち悪い」
ふ~ん。
日本の場合どうだったんでしょう。
私が子供のころは「ラジオ子」だったけど、ラジオから聞こえる「標準語」については何とも思わなかった。
祖母が東京の人で東京弁をしゃべってましたが、これも何とも思わなかった。
言葉のちがいを意識したのは伯母たちの大阪弁です。
同じ大阪弁にはちがいないのに、なにかちがう、どこかちがうと感じてた。
おとなになってから「いま大阪弁と言われているのは、大阪の商家で奉公していた大和、摂津、河内、和泉出身の女中や下男の言葉である」という説を読んでなるほどと思った。
伯母たちは「いいとこのお嬢さん」ではなかったけど「いいとこ」に住んでたんです。
で、やわらかい上品な、『細雪』みたいな言葉使いになったんだと思います。
「標準英語」は「いいとこのお嬢さん、旦那さん、奥さん」に加えて「オックスフォード、ケンブリッジ」がついてくる。
著者のクリスタル教授がマンチェスターの商業施設でエレベーターに乗った。
「標準英語」で「ドアが閉まります。ご注意ください」という音声が流れた時、客が笑った。
オックスフォード、ケンブリッジ出身の奥様お嬢様がおしとやかに「ドアが閉まります。ご注意ください」というのがおかしいんですね。
イギリスでの各種言語調査で、昔から「標準英語」の地位は高かった。
信頼でき、誠実で、教養があるように聞こえる。
一番評判が悪かったのはロンドンの下町の言葉だそうです。
なまりの中では「スコットランドなまり」が昔から評判が良かった。
この2、30年の間に「標準英語」の評価は下がって「地方なまり」が上がってきてるそうです。
BBCが「地方なまり週間」と銘打ったイベントをして、地方のアナウンサーをロンドンに集めて「お国訛り大会」をするほどの勢いです。
金融機関の各種案内の「機械音声」は「スコットランドなまり」が多い。
「機械音声」にどこのなまりを採用するか、状況に合わせるのがメーカーの腕の見せ所だそうです。
「なまり」というのも日本とイギリスでは「地位」というか「立場」がちがうようです。