イギリスのジャーナリスト、バーナード・レヴィン(1928~2004)の本を読んでます。
この人の祖父母はユダヤ人迫害を逃れて帝政ロシアからイギリスにやって来た。
祖父は英語を何とか読めるというレベルで、書くことはできなかった。
祖母はまったくだめだったので二人に読んでやることが多かった。
バーナード少年は読み書きができないということが理解できなかった。
読み書きができない人は「障碍者」という気がしていた。
中学生のころ街を歩いていたら見知らぬ男から突然声をかけられた。
「Can you read?」
からかってるのかと思った。
「読めますけど」と答えたら男はポケットから手紙を取り出して読んでくれと言った。
読んでびっくりした。
「オレの女房に手を出すな」という手紙だったのだ。
激しく非難してた。
細かく具体的に非難してた。
バーナード少年は「これ、読むのまずくね?」と思った。
で、男に「続けて読みますか?」と聞いたら男は読めという。
で、読み続けたけど、「これはちょっと」と思って黙ったら男は続けろというので最後まで読んだ。
読み終えたら男は手紙を持って立ち去った。
実に不思議な体験であった。
たぶん男は知り合いに頼むより見ず知らずの子供に読んでもらった方が気まずくないと思ったんだろうというのがバーナード少年の推測であった。
おかしいけど悲しい話である。
「国際識字年」というのがありましたけどぜんぜんおかしくない話である。