イギリスの社会学者ベアトリス・ウエッブ(1858~1943)の『私の修業時代』を読んでます。
彼女の若いころ、明治10年代20年代の日記が多数引用されてます。
貧困問題、労働問題に目覚めたころの自分が何を考えてたかを知ってほしいということです。
その英語をふつうに読めるのがなんか不思議です。
明治10年代の日本語の日記なら読みにくいと思います。
私に明治の英語と今の英語のちがいを理解するだけの力がないということだと思います。
彼女は億万長者の娘だったけど、労働問題調査のためにロンドンの港湾労働者たちの中に飛び込んでいった。
酒、バクチ、けんか、大変な世界であった。
当時「契約労働者」というのが急速に広がっていた。
「下請け」「派遣」という感じのようです。
「社員」なら30人でやる仕事を「契約労働者」8人でやらせた。
ある会合で彼女は労働問題について知り合いと熱心に議論してた。
そこに政界の大物某侯爵がやって来た。
「かわいいお嬢さん」と思って近づいて来たんだろう、と書いてます。
彼女は社交界で評判の美人です。
で、彼女は今何を議論してるのかを説明した。
侯爵は呆然とした顔で聞いていた。
侯爵が労働問題について何も知らず何の関心もなく知性のかけらもないことはすぐわかった。
こんな男が政界の大物かと思うとむかついた。
しかたなく某伯爵夫人の話題を出したら、侯爵は、いろんな貴族の家柄がどうの人柄がどうのとべらべらしゃべりだした。
始めのうちは適当に相槌を打ってたけどうんざりして相手にするのをやめたら侯爵は黙ってどこかへ行ってしまった。
ある「労働者大会」に行ったら国会議員が来ていた。
この男は労働問題には何の関心もなく、ただ労働者の票がほしいだけだった。
日記に「政治家!」と書いてます。
彼女はある「労働者大会」に初めて演者として出席した。
当日唯一の女性として紹介されて壇上に登るとき万雷の拍手を受けて気分良かった。
なんにもわかってない頭の悪い男たちが次々に演説した。
ちょっと遅れて当日の主賓某氏がやって来て彼女の隣にすわった。
某氏は主催者に「大会に20ポンド寄付するけど私の名前は出さないでほしい。」とひそひそ声で頼んだ。
で、某氏が演説を始めてすぐに「私は大会に20ポンド寄付します!」と声を張り上げたので彼女はイスから滑り落ちそうになった。
明治も令和もイギリスも日本もいろいろありますなあ。