「ゲーテ曰く」とくると深遠なことが言われるんだろうと思う。
「世の中には自分に向かないことをする人がいる。まちがった道を選んでしまって、本人もうすうす感づいているのにやめられないまま人生のかなりの部分を無駄に費やしてしまう」
ゲーテに言うてもらわんでも、という気もします。
私のエレキギターがそうですけどヤマハ音楽教室でよく見かけました。
「あんた向いてないんじゃないですか」
サックスが一番目立つかな。
発表会でとんでもなくヘンな音を出す人がいる。
またヘンな音ほど大きく出る。
不思議ですが、たぶんサックスという楽器はヘンな音ほど大きく出るような構造になってるんだと思います。
ヤマハ音楽教室には、音楽に向いてる少数の人と向いてない多数の人が通ってる。
ゲーテはヤマハを知らないのでどういう人を指してるのかは不明。
このゲーテの言葉を引用したのはイギリスの文豪マシュー・アーノルド。
フランシス・ニューマンというえらい学者がホメロスの詩を英訳した。
それをマシュー・アーノルドがボロカスにけなした。
けなされたフランシス・ニューマンは怒り狂って反撃した。
反撃されたマシュー・アーノルドはさらに怒り狂って言い返した。
「私は古典学者としてのニューマン氏は心から尊敬している。しかしニューマン氏には詩心というものがまったくない。そういう人は詩の翻訳に手を出すべきではない」
マシュー・アーノルドは自分が言うだけでは弱いと思ったようで「ゲーテもこう言うとるんじゃ!」とかました。
大論争だったようです。
ただし、ゲーテの言葉には続きがあるんです。
「しかし、まちがった道を歩んで無駄な努力をして、求めていたものが手に入らなかったとしても、別の良きものを手にできる事もある」
まあ、こう言っていただければ気がおさまりますね。
ニューマン氏は知らんけど。