朝刊。
女性のファッションで、毛皮が流行っているらしい。
第三次ブームだと書いてある。
毛皮ファッションに対する反対運動もよく聞く。
この記事でも、日本で長年、「着ない買わない」をモットーに反対運動をしている人が、「他にも着るものがあるでしょう」と語っている。
この人の名前が、「地球生物会議代表・野上ふさ子」さん。
なんとなく楽しい。
「野上」で「ふさふさ」で、いかにも「毛皮の友」という感じがする。
別の見出し。
「ソニー、ボタモチ、天プラ」
日本に来た外国人が、印象を語っているのだろうと思った。
昔、ラジオで、イーデス・ハンソンさんが、日本に初めて来たときのことを話していた。
彼女はオクラホマの出身で、生まれ育った所は大変な田舎だった。
日本という神秘的な国に行くので緊張していたが、東京に着いたら、彼女が見たこともないような大都会だったので驚いてしまったそうだ。
最初の夜、わらぶき小屋に泊まるのかと思っていたら、近代的な大きなホテルだった。
夜、寝ようとすると、不思議なメロディが流れてきた。
中華そばのチャルメラだったのだが、もちろんそんなこととは知らないハンソンさんは、超モダンな大都会に流れる哀愁を帯びたエキゾチックなメロディに、一体これはなんだろうかと、目が冴えて眠れなかったそうだ。
「ソニー、ボタモチ、天プラ」も、そういう話だろうと読みかけて驚いた。
私の読み間違いであった。
「ゾーニ、ボタモチ、天プラ」であった。
太平洋戦争で戦死した、画学生が残した手帳に書いてある。
フィリピンで戦死したこの人は、手帳にびっしりと、食べたいものの名前を書き込んでいる。
1.ゾーニ
2.ボタモチ
・・・
昭和21年、生きて帰った戦友が、この手帳を両親に届けたのである。
両親は、この戦友と会わなかったという。
父親は、晩年酔うと、「息子は南の島で絵を描いている」と言ったそうだ。