朝早くから、うぐいすが鳴いていた。
大阪にいたころは、うぐいすは身近な鳥ではなかった。
「漫画やテレビの中で、早春に突如表れて、梅の枝にとまって、ホーホケキョと鳴いて、どこかに消えてしまう鳥」であった。
身近な鳥は、雀と神社の鳩だった。
子供時代には、とんびとこうもりも、よく見た。
とんびとこうもりは、なぜいなくなったのだろうか。
奈良に住むようになって、うぐいすが梅の時期にだけ鳴くのではないことを知って、意外だった。
今朝、布団の中で聞いていたが、実に熱心に鳴く。
あきずに鳴く。
いろいろに鳴く。
ほーほけきょ。
けきょけきょけきょけきょけきょ・・・・。
ほけきょほけきょほけきょ。
この、「ほけきょ」は「♪ドミソ」か「♪シレソ」か「♪ドファラ」か、まあ、そういう音階のように鳴く。
いろんなふうに歌うのを、楽しんでいるようにも思える。
そうではなくて、ただ、口から出まかせ、じゃなかった、くちばしから出まかせなのかもしれない。
どっちでもよろしい。
聞いていると楽しい。
と、「カアカア」と、からすの間の抜けた大きな声が聞こえた。
じゃましに来たな、と邪推する。
負けるな!うぐいす。
ほーほけきょ。
カアカア。
からすはくやしいのだろう。
同じ鳥でありながら、むこうは、ほーほけきょで、ワシは、カアカアか。
なんでやねん!
いやがらせで、カアカア。
ほーほけきょ。
うぐいす、負けそう。
がんばれ!と思ってるうちに雨が降り出して、ほーほけきょもカアカアも聞こえなくなった。
雨の音もよろしい。
雨の音は、単調で、ラジオの雑音みたいなものだと思うが、単調な雑音には聞こえない。
なぜだ。