「花の金曜日」ですか。
毎朝バス停でいっしょになる77歳の女性は、金曜日は本当にうれしそうだ。
月曜から金曜まで、バスを乗り継いで、娘さんの家の手伝いに行く。
夜遅くまでご苦労さまである。
で、金曜はうれしい。
バス停で顔を合わせるなり、いつもニコニコと声をかけてくる。
「早いねえ、一週間。もう金曜やねえ。うれしいわ」
あまりうれしそうなので、こっちもうれしくなる。
この方の娘さんは、いいことをしている。
母親に、「ハナキン」と、土曜日曜をプレゼントしている。
土曜日曜が、これほどうれしいなら、「毎日が土曜と日曜日」なら、天にも昇る心地か。
「毎日が土曜と日曜」なら、「ハナキン」はない。
心弾む「ハナキン」と、待ち遠しい土曜と日曜を迎えるためには、月曜から金曜までのおつとめが必要なのか。
ややこしい問題である。
この、ややこしい問題を解決するには、「何曜日」というのをやめればいいのだろう。
「ハナキン」も「ブルーマンデイ」もなくなるはずだ。
二十年ほど前、会社に、Yさんという掃除のおばさんがいた。
60代なかばだっただろうか。
眼が悪くなったとこぼしていた。
壁のカレンダーを見ながら、
「1・・・2・・・3・・・このへんは、かすんどるんよ。5・・・6・・ぼーっとしとる。7、8、このへんは、はっきり見える」
「Yさん!土曜と日曜だけ、はっきり見えるんやね」
「え!?い、いや・・・」