若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

大食小食

朝のバス停で、いつもの老婦人。

「今日は木曜ですよね。明日は金曜。うれしいわ。疲れて疲れて。なんやかや、忙しいんですよ。娘のとこがね、高校生の男の子二人でしょ。よく食べるよく食べる!作っても作っても足りないって言うんで困ります。下が柔道やってるもんですから。からは小さいけど、よく食べるんです。初段なんです。ほんとに食べますよ。い〜っぱい食べさせても、夜中にまたなんか食べてるみたいです。天理には勝てないって。天理は強いんですね。柔道の話ばっかりで。勉強の話すると渋い顔になって」

ニコニコしながら聞いていたら、バスが来て、ニコニコ顔のまま乗ってしまった。
おばあちゃんが作るものをぺろりと食べて、まだ足りないと困らせている小柄な高校生のことを考えていたら、ニコニコがとまらなかったので、乗客に不審に思われたかもしれない。

「大食」というのは、なんとなく楽しい。
私は、子供のころは小食だった。

自分で思っていたわけではない。
親戚の農家に行ったとき、そこのおばさんに、「この子は食べん子やなあ。小食やなあ」と言われたことがあるのだ。
それが大変な心のキズになったのである。

次女が幼稚園のころ、友達の家で、食事をよばれて帰ってきた。

「パパ、給食やねえ、ってどういうこと?」

友達のお母さんが、娘に、「○子ちゃん(娘のこと)は給食やねえ」と言ったというのだ。

一瞬、何のことかと思った。

「小食やねえ、って言いはったんとちがうか?」
「あ、そうそう!」

食べきれないほどの御馳走を出すのが、「おもてなし」の基本という、思想というか哲学がある。

大学生の時、友人のA君の家に遊びに行った。
立派な農家であった。

一晩泊まって、次の朝、朝食の用意ができたというお母さんの声に、座敷に入って驚いた。

大きなおぜんに、刺身、てんぷらをはじめとする料理の数々がすきまもなく並び、ビール瓶と徳利が林立!

こ、これはいったい・・・。

ほとんど食べのこして、お母さんに「小食なんですね」と言われた。

朝食後、A君と二人で、自転車で近辺を見学。
途中、親戚に二軒立ち寄ったら、二軒とも立派な農家で、二軒ともすしを取ってくれて、ビールを出してくれた。

必死の思いで、すしを食べ、ビールを飲もうとしたが無理であった。
「小食なんですね」と言われた。