ライオンの糞を利用するアイデアは、徳島県農業試験所のものである。
鹿による林業被害を防止するため、研究を続けていた同試験所は、海外におけるライオンの糞利用に着目した。
肉食獣の糞を利用して、草食獣による農産物や樹木の被害を防止する研究は、海外では早くから行われており、ロシアとドイツが先進国である。この分野の開拓者として、モスクワ大学糞学部教授、糞学博士のゲリベン・クソシリスキー教授、ベルリン大学のフンバルト・ウンデル教授が有名である。
なかでも、クソシリスキー教授は「クソシリスキーの法則」の発見者として知られている。これは、「草食獣は肉食獣の糞の半径a×yメートル以内には近づかない」という法則である。「y」は肉食獣の体重、「a」はその動物固有の数値であり、「クソシリスキー係数」と呼ばれている。
この法則は、アフリカの原住民の間で体験的に知られていたものを、クソシリスキー教授が長年の研究により数値化したものである。
この法則の発見によって、クソシリスキー教授は1960年のノーベル賞候補に挙げられたが、惜しくも受賞を逃し、無念さのあまりフン死したと言われる。
糞を利用して恐怖心を与えるという発想は古代から世界各地で見られる。
日本で有名なのは、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際の事例である。
日本軍は、朝鮮半島に上陸後、兵士の糞何人分かを一つにまとめ、日本兵一人の糞であるように見せかけた。
朝鮮兵は、「とんでもない糞をする奴らが攻めて来た」と恐れたということである。
徳島県農林試験所では、動物園からライオンの糞をもらい受け試験農園で試したところ、鹿による苗木の被害が激減し、「クソシリスキーの法則」が極めて精度の高いものであることが実証された。
その成果を元に、JR西日本の計画となったのである。
JR西日本では、鹿と列車の衝突多発地帯約5キロメートルにライオンの糞を置くことを決定、必要量5トンの供給を白浜サファリパークに要請した。
この決定に危機感を抱いた当商店では、即座にプロジェクトチームを組織、若草鹿之助をプロジェクトリーダーとして、とりあえずサファリパーク側に、JRに対して糞を供給しないよう要請し、会談を求めた。
ところが、サファリパーク側は当商店の要請を無視、供給を開始すると発表した。
それを受けて、当商店はライオンの糞の搬出を実力で阻止することを決定した。