テレビで1967年の日活映画『夜霧よ今夜も有難う』を見ました。
1966年にヒットした石原裕次郎の同名の曲にあやかって急遽(たぶん)制作された映画だと思います。
ロマンチックムード歌謡の名曲『夜霧よ今夜も有難う』は私のカラオケ18番で、左手にブランデーグラス、右手にマイク、ちょっとはすに構えて「♪しのびあう恋を 包む夜霧よ」と切なく歌う私の姿にしびれた女性は多いはず。
次に得意なのは『長崎は今日も雨だった』で、この曲の時はマイクスタンドに向かって直立不動、前川清になり切って・・・なんの話か。
映画です。
最初の画面で粋なマドロス裕ちゃん登場。
外国航路の船の甲板で電話してる。
なぜ船室ではなく甲板で?と野暮なことは言わずカッコいい裕ちゃんに見とれてればよろしい。
ふ~ん、この時裕ちゃんすでにちょっと太目やなあと野暮なことは言わず聞いてたら、電話の相手は浅丘ルリ子。
ショウビジネスの世界を目指してダンスの練習中である。
結婚を申し込まれた浅丘ルリ子が喜んでOKして、裕ちゃんが待つ教会に向かう。
ええ~っ!?
映画が始まって1、2分で結婚!?
裕ちゃんと浅丘ルリ子が出てきたら、二人が結ばれるのかどうか、気をもませるだけもませて引っ張るだけ引っ張ってやきもきさせるのがふつうじゃないですか。
1、2分で結婚させてあと1時間半どうするの?と心配するのは素人の浅はかさ。
そう簡単に結婚なんかさせませんよ。
タクシーで教会へ急ぐ浅丘ルリ子が花屋を見つけてタクシーを止めると花を買いに飛び出す。
そこへ車が突っ込んできて浅丘ルリ子を跳ね飛ばす。
教会で待ちぼうけの裕ちゃんは浅丘ルリ子を探し回る。
警察にも行くけどどうなったかわからない。
なぜだ?
タクシーの運転手と花屋の主人の目の前で跳ね飛ばされたんですよ。
どうなったのかと思ってたら、画面に「4年後横浜」と字幕が出る。
そして裕ちゃんは横浜のナイトクラブで「マスター」と呼ばれてる。
船員はやめたらしい。
ピアノを弾いて歌ってる。
「マスター」業のかたわら、どうも密出国のための船の手配もしてるみたい。
密出国と言ってもいい人だけ世話してやる。
で、シンガポール行きの船に乗りたいという男が現われるんですが、これが東南アジアの某国の民主化運動の指導者二谷英明です。
で、その奥さんが浅丘ルリ子なんですが、なんとなくスー・チー女史に似てると思いました。
二人がなんでそうなったかはあとで二谷英明が詳しく説明してくれます。
滞在中のホテルで武装暴力団に襲われた二谷英明は走って逃げだす。
逃げていく途中でどういうわけか裕ちゃんと浅丘ルリコが待ってて3人いっしょに教会に逃げ込む。
暗くなったら逃げ出そう、などとのんきなことを言う。
暗くなるまでヒマなので二谷英明がいろんないきさつを説明する。
エンエンと説明する。
堂々と説明する。
「ソクラテスの弁明」という感じである。
「ソクラテスの弁明」は知らんけどそんな感じである。
堂々たる説明が終わるのを待っていたかのようにパトカーがサイレンもけたたましく到着する。
それを見た3人は、「今だ!」と言って教会から飛び出す。
教会から飛び出した3人を誰も気にしない。
3人は走ってどうしたと思いますか?
なんと!市電に乗ったんです。
市電でっせ!市電!
行き先も確かめずに飛び乗った。
この映画の一番の見せ場は、裕ちゃんが弾くピアノをバックに浅丘ルリ子が演説するとこです。
このちょっと前に裕ちゃんは暴力団に手の甲をナイフでグッサ~!と突き刺されてるんです。
グッサ~!グリグリ!
思わず目を背ける場面でした。
その裕ちゃんがピアノを弾くんです。
両手で。
医者にも行かず。
まあ、車に跳ね飛ばされた浅丘ルリ子も医者に行かなかったからお互い様かな。
期待通りの映画でした。