グリン・ジョンズという人の『サウンドマン』という本を読んでます。
この人は1942年生まれのイギリスの「レコーディングエンジニア」で、イギリスやアメリカの超大物ミュージシャン(ビートルズやローリングストーンズなど)のレコーディングを手掛けてます。
まだ駆け出しの1967年、ローリングストーンズのドイツ公演の音響をまかされた。
車に機材を積んでドイツに向かった。
相棒は親しい関係の6歳年上のイアン・スチュワートという人で、ロック業界の人と思えないほど温厚でいい人だった。
そのイアンが朝から珍しく機嫌が悪い。
どんどん機嫌が悪くなる。
ドイツに入って高級レストランで昼食。
食べ終わるとイアンがウエイターを呼んで勘定書きを持ってくるように言った。
その言い方がイアンらしくなく実につっけんどんだったので、なんでこんなに機嫌が悪いのか不思議だった。
勘定書きをじっと見るとウエイターに向かって吐き捨てるように言った。
「チップをもらえるなんて思うなよ!オレはドイツ人のせいで7歳までバナナを食べられなかったんだからな!」
グリン・ジョンズは腹を抱えて笑い転げた。
まさか日頃温厚なイアン・スチュワートが戦時中の食い物の恨みをここで爆発させるとは思わなかった。
気の毒なのは若いウエイターで、何のことかわからずぽかんとしていたそうです。
非常にまじめで温厚な人だけに20年間バナナの恨みを抱え続けてたんですね。
この人はローリングストーンズのメンバーと言ってもいい存在だったそうですが、麻薬はもちろん酒もたばこも縁がなくゴルフが趣味という当時の音楽業界ではまれなまじめ人間だったのに47歳で亡くなってます。
麻薬も酒もたばこも何でもかんでもやりたい放題のストーンズのメンバーが長生きしてイアンが若くして死ぬとは世の中まちがってると嘆いてます。