「ロケットスタート」というと、陸上の100メートル走を思い浮かべますが、乗馬でもあります。
めったにないことで私はきのう初めて見ました。
きのうのレッスンは高校生の女の子と二人でした。
スラリとして日に焼けた、いかにも「乗馬女子」という感じの子でした。
障害も飛んでいるそうで、かなりの腕の子です。
ウオーミングアップは二人とも調子よく進みました。
駆け足は一人ずつすることになって、まずその子が走った。
で、スタート直後に、馬がビューン!と飛び出したんです。
「ひゃ~!これがうわさのロケットスタートか!」
指導員は、「おおっ!」と声を上げましたが、私は息をのみました。
いったいどうなることかと震え上がって見てたんですが、女の子はあわてずさわがず徐々に馬を落ち着かせていきました。
ふつうの走りになって、とまりました。
指導員が笑いながら、「だいじょうぶ?」と聞いたら、女の子も笑いながら「だいじょうぶです」と答えました。
さすが障害を飛んでるだけあっていい度胸してるなあと感心しました。
指導員が、「どうする?やめとこか?」と聞きました。
中高年ならここで当然「やめときます」と答えます。
こんなロケットスタートでなくても、馬にちょっと普段と違う動きをされると自分から「今日はやめときます」という人が多い。
ところが女の子は、「だいじょうぶです。乗ります」と言ったんです。
私は「やめて!」と思いました。
これ以上怖い思いをしたくない!
また女の子が走り出して、今度はふつうに走ってるように見えたんですが、指導員が「やめとこ~」と声を掛けました。
女の子はまたも「だいじょうぶ!」と言って走り続けました。
指導員は「う~ん」と言ってましたが、「やっぱりやめとこ」と言って馬の進路をふさぎました。
女の子は「だいじょうぶです!」と言いましたが、指導員は「私がだいじょうぶじゃないの!」と言って馬を止めました。
馬を交換することになって女の子が馬場から出て行きました。
「じゃ、若草さん、いきましょう!」と言われたんですが、ドキドキハラハラが収まらず正直なとこ行く気なし。
私の行く気のなさを感じ取って馬ものらりくらりでなんにもできないまま時間切れでした。
これほど馬を動かせなかったのは何年振りかとしみじみしました。
こんな時に限って見物が多くて、気の毒そうな笑いに迎えられたのであった。
女の子に「ええ度胸やねえ」と言ったら「えへへ」と笑ってました。