若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

須崎愼一著「二、二六事件」

副題は「青年将校の意識と心理」

彼らの手記や、裁判での陳述をもとにその人間像に迫り、事件の真相を描こうとするものである。

青年将校たちが、当時の「農村の疲弊」をはじめとする行き詰まりを打破しようとして「決起」したことはよく知られているが、軍隊内部の腐敗に対しても、大変な不満と危機感を抱いていたようだ。

「演習が三日だと演習手当てが出ないので、手当てを目的に四日間の演習をする」
「中国でゲリラ討伐に一週間出ると成績が上がるのでむやみに討伐に出る」
満州で、ある師団参謀長が自分の女を連れて飛行機で出張した」
「機密費や偵察費などを、実際にそれを必要とする部隊に渡さず、本部でためておいて宴会費用に当てている」

こういう具体的な不満は非常に分かりやすい。
著書も書いているように、今の役所や会社のことみたいだ。

「君側の奸臣に天誅を加える」などというのは分かりにくい。
時代の空気や、その人たちの気分に属することは簡単には理解できない。

例によって、私にとって「青年将校の心理」はどうでもよろしー。
この本のハイライトは、2月26日当日の陸軍大臣官邸の模様だ。
川島義之陸軍大臣に自分たちの要望を伝えるため、朝5時前、200名ほどの部隊が陸相官邸に到着。
将校たちは面会を要求したが、恐怖にかられた陸軍大臣は出てこない。

陸相が現れたのは午前6時過ぎ。
その間、気丈にも陸相夫人が青年将校たちの相手をしていたのである。
将校たちが夫人に、「閣下には危害を加えません」と約束したのでノコノコと出てきたそうだ。

いい話である。
こういう、いざというとき頼りになる気丈な奥さんがいればこそ、我々のような頼りない男でもなんとなくやっていけるのである。

私も青年将校同様、日本の現状に危機感を抱いている。
道徳教育の必要性も感じている。
この陸相夫妻のエピソードなどを教科書で取り上げて、日本の婦道、婦徳を大いに顕彰し、もって若き女性の自覚を促し、男が安心して暮らせる日本を取り戻せるよう願ってやまない。