若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

「座布団一枚」

笑点」という番組がある。
父が好きでよく見ていた。落語家が何人かで頓知を競うコーナーがあって、気のきいたことを言うと座布団がもらえる。

空海の『三教指帰』に似たような話が出てきた。『後漢書』に、雄弁家の戴憑(たいひょう)という人が登場する。この人は「弁論大会」で論敵50人を負かして「50枚のムシロを重ねた」
笑点」では、「歌丸さんに座布団一枚!」だが、古代中国の弁論大会では、「戴憑さんにムシロ一枚!」だったようだ。

芸談:あばらかべっそん』という本がある。
桂文楽自伝、みたいな本だ。

「あばらかべっそん」というのは口から出まかせのでたらめだと思っていたが、とんでもなく奥深い言葉のようだ。

空海の『秘蔵宝やく(ヘンテコな漢字)』に「あばらか」が出てきた。

「阿(ア)」は、「永遠の生命を示す」
「縛(バ)」は、「言葉を離れたものを示す」
「羅(ラ)」は、「穢れなきものを示す」
「訶(カ)」は、「業を遠離したものを示す」

この四文字に、もう一つ「キャ」というヘンな文字を加えた五文字で、大日如来を表わすのである、と解説には書いてあるように思う。昔は仏教が身近にあったから、「アバラカ」をふざけて使うこともできたのだろう。

『あたごの浦』という絵本がある。

子供も喜ぶが、親のほうがうれしくなるような本だ。
月のきれいな夜、あたごの浦のなすび畑で、タコがなすびをちぎって食べているという、アンリ・ルソー風というか、シュールリアリスティックというか、わけのわからん場面から物語は始まる。

そこにタイがやってきて
「これこれおタコ、おまえはそこでなにをしよんじゃ」
「へえ、おなすびちぎって食べよります」
「それもええが、演芸会でもせんか」

というわけで、魚達の大演芸会が始まる。タイが松の木に上ると、月の光を浴びて朝日のように見える。タイが、「松にお日さん、これどうじゃ!」と見得を切る。それを見た魚達が口々にはやす。

「妙妙妙!」

この「妙妙妙!」が実に印象的である。この本を読んだ家庭では、我が家同様、しばらくの間「妙妙妙!」がはやりますよ。
さて、空海
空海が唐に渡ったころ、唐の文人達は、互いに詩を披露して、いい詩には「妙妙妙!」と声をかけあった、とどこかで読んだことがある。
長安文人たちと、あたごの浦の魚たちの関係は?