若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

空海「三教指帰」とS夫人

『日本の仏教思想:最澄空海』を読む。

解説の渡辺照宏さんは、日本の仏教は、最澄空海、その他多勢であると書いている。やはりえらいようだ。
最澄空海は対照的だ。
最澄は、弟子たちに、「色々教えてやるが、食べることくらいは自分で心配しろ」と言った。
空海は、「何か食うかい」と、弟子の面倒を見てやった。
最澄の弟子が空海になびいたのは当然だ。

この本には、最澄の「願文」「山家学生式」、空海の「三教指帰」「秘蔵宝○(むつかしい字)」が収められている。
三教指帰」は、儒教道教と仏教の優劣を論じたものというから、わかりやすいだろうと思って読んでみた。

司会者登場。
私の甥が、飲む打つ買うの三拍子そろったどうしようもない男で親も困り果てています。先生方、説教してやってください。
儒教代表の先生が、しっかり勉強して立身出世すれば、金も酒も女もついてくると説教する。
道教代表登場。
そんな俗世間の基準にとらわれてどうする。すべての欲望を離れて仙術を身につけなさい。

真打登場。
儒教道教もダメ!小乗仏教もダメ!ぜーんぶダメ!大乗仏教が最高です!

わかりやすい。特にえらいとは思えないが、解説によれば、架空の人物を登場させて、思想の優劣を論じるという、この「形式」が日本初だそうだ。24歳の時に書いたのだから、かなりおしゃれで頭がよかったのだろう。「日本思想史」を勉強しないと誰がえらいかわからない。

この本は図書館で借りた。誰かが線を引いたり書き込みをしたりしてある。
図書館の本に線をひくのはよくない。よくないと思うが、線をひいてある本は好きだ。
お、あんた、読んだんですね、という感じがするのがいい。この本は線だらけだ。○もつけてある。線と○はどうちがうのかなと思う。

「解説」と「三教指帰」には、びっしり線をひいてある。「秘蔵宝○」は、はじめの何ページかだけ線をひいてある。難しくて挫折したのだろう。
非常に好感が持てる。全編びっしり線をひいてあったらむかつくところだ。

さて、「三教指帰」に、「人間はうわべだけ飾ってもダメだ」という箇所がある。訳文では、「錦の袋でも中身は糞だというような人間もいます」
ここに線をひいて書き込みがしてある。

「S夫人だ!」

最澄空海もどうでもいい!
S夫人とは!?