興福寺猿沢の池での放生会については、何年か前に書いたことがある。
興福寺主催の放生会にならって、近くの幼稚園の子供達が、金魚を猿沢の池に放して、生命の尊さを学ぶという、厳粛かつほほえましい行事が、池にすむ、どうもうな肉食亀たちによって無茶苦茶にされるという話だった。
子供達が金魚を放すや、待ち構えたすっぽんや、カミツキガメどもが、金魚に襲い掛かり、引き裂き食いちぎって、子供達が泣き叫ぶという悲惨な記事が、朝日新聞で紹介されていた。
朝日朝刊によれば、きのうが本家興福寺の放生会だった。
「仏教の伝統的行事」と書いてあるが、始まったのは昭和初期とのことで、「伝統的行事」があまり伝統的でない、よい例である。
本家放生会は、園児が金魚を放すというようなちゃちなものではなく、鯉や金魚など二千匹を放す。
猿沢の池に住み着く肉食亀にとっては、本家の仏教伝統的行事であろうが、そんなものお構いなしで、放された鯉や金魚に襲い掛かる。
待ち構えているのは、肉食亀だけではないそうだ。
うなぎも待ち構えている。
うなぎが鯉を食べるそうです。
知りませんでした。
鳥も待ち構えている。
アオサギ、コサギ、カワセミなど。
ほんとに、放されるほうこそいい迷惑で、これでは、「放生会」というより「放殺会」だ。
「殺されて来い!」
幼稚園も困惑していたが、興福寺も困惑している。
「みだりに殺生してはならぬという教えだが、亀や鳥は鯉を食べないと生きていけないし・・・」
亀や鳥の話ではなく、人間の話だと思いますが。
この記事で一番気になるのは、一歳になる息子を連れて放生会に参加した奈良市の主婦鈴木真美さん(29)だ。
鈴木さんは、「子供が鯉とともに大きく成長してくれれば」と願いを込めて鯉を放したのだ。
どうする?
「恐ろしい世の中を、鯉とともにたくましく生き抜いてほしい」という願いに、かえたほうがよさそうですね。