バス停で。
電線にカラスが何羽か止まってた。
このあたり、カラスが多いです。
いつだったか、誰だったかと話してて、住所を聞かれて答えたら、「あ〜!カラスが多いらしいですねえ!」といわれた。
カラスが多いので有名というのもぱっとしませんね。
とにかく多い。
昔のカラスは、「カアカア」と「日本昔話」的に鳴いた。
のどかに鳴いた。
癒し系に鳴いた。
今のカラスはちがいます。
「ガアガア」と鳴いたり、「ギャアギャア」鳴いたり、「ギョエギョエ」「ギャオギャオ」、もうムチャクチャでござりますよ。
憎々しいです。
バスを待つ間、私は、ぽかんと口をあけて電線のカラスを見上げていた。
いつもそうなんです。
奈良交通バス学園大和町二丁目停留所で、ぽかんと口を開けて空を見上げている男をお見掛けになりましたら、それは私ですので、どうぞお気軽にお声をおかけ下さい。
何の話か。
カラスです。
さて、カラスは、一羽二羽と、飛び立っていった。
最後に一羽残った。
一羽残ったカラスを、私は根気良く、ぽかんと口をあけたまま見上げていた。
カラスは、私を見下ろして、バカにしたように「クワア」と鳴いた。
そして、バタバタと羽ばたいて、北方向に飛び立った。
三度、四度、バタバタと羽ばたいた。
四度目、カラスが大きく羽根を広げた時、北からの風がさっと吹きつけ、カラスはあおられて大きく羽根を広げたまま、ふわりと押し戻された。
押し戻されたカラスは、そのまま反転、バタバタ羽ばたくと、南に向かって飛んでいってしまった。
納得できない。
北に向かって飛び立ったのだ。
風にあおられたからといって、そのままさっさと南に向かうとは。
いったん押し戻されたが、体勢を立て直して北へ向かった、というなら納得できる。
なんか、裏切られた感じがする。
それでもカラスか!
風に吹かれたくらいで進路を変えるなんて。
風に吹かれて、気が変わったんでしょうか。
カラスに「気」なんかあるかな。
カラスよ、「風次第」とは、情けないではないか。
「あんたに言われたくない」
失礼しました。