大阪市立美術館に行ってきました。
フランスで企画した展覧会のようです。
子供を描いてあるなら楽しいはずで、楽しい展覧会でした。
画家が、自分の子供やよその子供を描いてる。
孫がなかった(たぶん)のがちょっとさびしい。
以前、小磯良平美術館で、日本人画家の作品を集めた同じような展覧会を見ました。
これもよかった。
今回の展覧会以上によかった。
日本人の子供のほうがなじみがあるからかな。
さて、美術館で、鳴り物入りで宣伝してる特別展だけ見て帰るのは素人ですよ。
私みたいな美の玄人は、特別展を見た後、常設展をじっくり見る。
大阪立美術館では、「器の紋様」という展示をしてました。
薄暗い、というよりかなり暗い展示室に入って、ガラスケースの中の壺をのぞきこんだ私は、思わずあっと叫んでしまった。
「景徳鎮窯:大明万暦年製」
おお!これが、あの景徳鎮窯大明万暦年製の壺か!
私の好きなテレビ番組「開運!なんでも鑑定団」でおなじみなんです。
「さあ、本日の鑑定品ですが、依頼人の山田さん、これはいったいなんでしょう」
「壺ですね」
「いや、壺はわかるんですが、どういう壺なんですか」
「景徳鎮の壺です」
「どうして手に入れられたんですか」
「亡くなった骨董好きだった父が、50年ほど前に金に困った友人に頼まれて150万円で買ったものです」
「150万!お父さんは、この壺についてなんておっしゃってました」
「これはワシが持ってる中でも一番いいもんだ。金に困ったときはこれを売れ。家の一軒や二軒くらい建つと言ってました」
「それでは、依頼人の評価額は?」
「骨董好きの父を信じて、ちょっと控えめで1500万ということで」
「ちょっと控えめで1500万!オープン・ザ・プライス!」
パラパラパラパラ!(値段表が回転する音)
パシャッ!(止まった音)
「2000円!!!!」
鑑定士中島先生のイキのいい江戸っ子口調の解説です。
「景徳鎮窯大明万暦年製とありますがね、まず土がいけませんね。景徳鎮の土は、こんなにざらざらしてません。それから色がいけない。石膏みたいなぱさぱさでかさついた白ですね。景徳鎮は、もっと温かみのある白なんです。それから焼きが甘いですね。指ではじくと、本物ならキンキ〜ンと金属的な音がする。これはボコボコ鈍いです。いいとこないんですが、まあ、気軽に傘たてにでもなすったらいかがですか」
毎度おなじみです。
景徳鎮万暦年製と聞いただけ「ニセモノ」という気がしてうれしくなる。
それが目の前に!
うれしさのあまり思わずガラスケースをバンバンたたいてしまったので、係員の女性が飛んできた。
「お客様!やめてください!」
「この壺を出してください」
「え!出してどうするんです」
「指ではじくんです」
「はじいてどうするんです」
「キンキ〜ンと金属的な音がしたらホンモノ、鈍い音ならニセモノなんです」
「あ〜たねえ、ここをどこだと思ってるんです。東洋美術の宝庫大阪市立美術館ですよ。中でもその景徳鎮窯大明万暦年製の壺は当館が誇る名品中の名品でございます!」
「だから、それは指ではじいてみないと」
「ウチの館長がしょっちゅうはじいてます!特にその壺は何度もはじいてます。今朝もケースから取り出してはじいてました」
「で、なんといってました?」
「首をひねって、『この音はちょっと・・・しかし、今さらなあ・・・』といってケースに戻してました」
「今さらって、それは・・・」
二人で言い合ってたら、別の係員が飛んできて、「シ〜ッ!」
私としたことが、興奮して美術館で大声を出してしまった。
静かに次のケースに移動。
おお!
「磁州窯」!
これが、あの磁州窯の壺か!
私の大好きなテレビ番組「開運!なんでも鑑定団」で、以下同文。
感激しながら次のケースに移動。
おお!
「竜泉窯」!
これが、あの竜泉窯の壺か!
私の大好きなテレビ番組、以下同文。
いやあ、景徳鎮、磁州窯、竜泉窯といえば、「開運!なんでも鑑定団」でおなじみの、ニセモノの定番というかニセモノの常連というかニセモノ御三家というかニセモノ三銃士というかニセモノ三羽烏というかニセモノ三冠王というか、ここで一挙にめぐり会おうとは!
さて、大阪市立美術館収蔵の、景徳鎮、磁州窯、竜泉窯の壺ですが、私の鑑定結果をこの場で公表するのは影響が大きすぎると思うので控えさせていただきます。
ただ、三点に共通する印象だけ書いておきます。
なんとなく古びている。
ウチにあったらきっと家内が捨てる。
以上。