タイトルを見ても何のことかわからないと思います。
キンドル無料本『胡堂百話』というのを読みました。
銭形平次の作者で音楽評論家としても有名な野村胡堂のエッセイです。
その中に、小説家の上司小剣(かみつかさしょうけん)という人が出てくる。
まったく知らない名前なのでウイキペディアで調べたら、芸術院会員だった人です。
戦後まもなく芸術院会員になってすぐ亡くなってます。
当時は有名だったんでしょうね。
この人のことを野村胡堂は「蓄音機マニア」として紹介してます。
最近は「オーディオマニア」というのは流行らないみたいですが、私たちの若いころは雑誌などで見かけたもんです。
トランジスタよりも真空管の音がいい!というような人たちです。
真空管のアンプを神棚に置いて拝んでるとか、年に一度だけ真空管アンプのスイッチを入れるとか、そんな話を読んだことがあります。
「良い音」を徹底的に追求する人たちがいるんですね。
オーディオマニアの奥さんの手記を読んだことがあります。
「夫はアンプとかスピーカーの話ばっかりする。日曜になると子供を連れて外出させられる。子供を連れて家を一歩出たとたん、家を揺るがすような大音響が鳴り響く。あれがいいこれがいいといろんな部品の話をしつこくするけど、名前なんか絶対おぼえてやらない!」
マニアの家族も大変です。
で、大正から昭和初期の「蓄音機マニア」には、「真空管かトランジスタか」という悩みはない。
「手回し蓄音機」か「電気蓄音機」かという対立があった。
「蓄音機マニア」の上司小剣はもちろん「手回し派」だった。
手回し蓄音機の方が人間らしい温かみのある音がする、ということです。
上司小剣は、いい音を求めて世界の手回し蓄音機を集めてた。
レコードを集めてる野村胡堂をばかにしてた。
上司小剣にとって大事なのは蓄音機なんです。
「レコードというのは蓄音機の性能を試験する付属品だ!」と豪語(?)してたそうです。
わけわからんけど、これがマニアだ!という感じで、いいんじゃないでしょうか。