若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

「敵機爆音集」

子供の頃、家に手回しの蓄音機があった。

箱型の大きなものだった。
数年前伯母の日記を見つけたとき、その蓄音機は伯母や私の父が祖父にねだって買ってもらったもので、大正12年3月4日に我が家に来たものだとわかって感激した。
ここです。
http://www16.ocn.ne.jp/~fobasan/page006.html

祖父が聞いたらしい邦楽のレコードや、伯母達が聞いたのであろうクラシックのSP盤がたくさんあった。父のものと思われる「ヂャズソング」もあった。

小学生の頃、こういうSPを聞いたが私にわかるのは「ヂャズソング」と「軍歌」くらいであった。「愛国行進曲」は好きな曲でよく聞いていた。
ある夜、「愛国行進曲」をかけていたら母がやかましいからやめろと言った。私が聞き続けていると、母は「そんな歌をかけてるとエムピーが来るよ」と言った。

「そんな歌」とか「エムピー」とか、子供にはわからないようでわかるので、私はあわてて蓄音機を止めた。

「エムピー」というのは「ミリタリーポリス」、つまりアメリ進駐軍憲兵だ。当時は、子供に言うことを聞かせるのに「エムピー」が有効だったのですね。
当時の子供には進駐軍の兵隊さんは人気があったのであるが、まあそのあたりも子供にはわかっていたのであろう。

我が家にあったレコードの中で、子供心に「珍品」だと思ったのは「敵機爆音集」である。これは何枚組かの豪華版でアメリカ軍の戦闘機や爆撃機の「音」が録音してある。その飛行機の説明と高度別の爆音が入っていた。

ボーイングB17。高度三千メートル。ブーーン」
ボーイングB17。高度二千メートル。ゴー」

なんだこれは、と思いましたね。

「解説」で一つだけ覚えているのがある。
「カーチスP51」だったか。
「カーチスP51。『我にカーチスP51あり』と、彼一流の鳴り物入りで登場したものの、南方戦線においてバッタバッタと撃ち落され・・」

それなら「爆音集」などいらんと思うのであるが、物資不足の中不思議な豪華レコードを作ったものだ。
軍事独裁国家日本を象徴する名盤だと思う。