朝日新聞7月15日朝刊。
特ダネです。
2021年福島県の桃農家を農業資材販売会社の社長が訪れた。
社長は白髪交じりの男性を連れていた。
男性が差し出した名刺には「東京大学大学院農学部客員教授」の肩書があり、宮内庁の研究所の総括管理者もしていると自己紹介した。
男性は、皇室に桃を献上してほしいと言った。
農家の人は正式な書類が欲しいと言った。
男性は6月に「献上依頼書」を持って現れた。
「宮内庁管理部大膳課」の名前で桃を二箱献上してほしいと書いてあった。
農家は桃70キロを献上した。
7月に「献上お礼」として木の看板が送られてきた。
「皇室献上桃生産地」と墨痕鮮やかに書いてあった。
年末にはやはり「献上お礼」として「美智子様が作った大福餅」が届いた。
地区の人たちは喜んで食べた。
中には恐れ多いと言って神棚にそなえた人もいた。
なんかヘンだなと思った農業資材会社の社長が東大と宮内庁に問い合わせたらそんな人知らんと言われた。
その話を聞いた朝日新聞の記者が13日男性を突撃取材した。
男性は、すべてホントだけどいろいろ複雑な事情があるんですと答えたそうです。
わが愛する朝日新聞久々の鮮やかな特ダネでうれしい。
この日本を揺るがす怪事件のハイライトは「美智子上皇后お手製の大福餅」でしょう。
美智子上皇后と大福餅。
シュールレアリスティックな組み合わせである。
学校の試験なんかで「似ているものを線でつなぎましょう」というのがありますね。
「美智子上皇后」と「大福餅」を線でつなぐ人いるかな。
「同じ仲間を丸で囲みましょう」という問題もある。
「美智子上皇后」と「大福餅」を丸で囲む人いるかな。
「東大大学院農学部客員教授」とうそをつくのはありきたりである。
「宮内庁の研究所で総括管理を担当している」とうそをつくのもおかしくもなんともない。
「美智子上皇后お手製の大福餅」はちょっと思いつけませんよ。
看板を作ったり大福を送ったり、この男性の誠実さを疑うことはできない。
暑さも吹っ飛ぶさわやかな余韻が残る記事であった。
私はこの男性にモンドセレクション金賞を授与したいと思います。