ゴドフリー・ベンソン著『アブラハム・リンカーン』をやっと読み終えました。
時間かかりました。
1916年のイギリス人の英語、ややこしかった。
飛ばし読み名人の私ですが、これまでのようにややこしいところを飛ばしてたら読むとこがないんです。
著者のリンカーンに対する敬愛の念があふれた本です。
心の底から信頼できる人間がこの世にいるとしたらそれはリンカーンだ!と断言してる。
リンカーンの演説は宗教色が非常に濃いそうですが、それは聴衆受けを狙ったものではなくリンカーンの心から自然にあふれ出てくるものだった。
周囲の人は「リンカーンは熱心なクリスチャンだけど本人はそれに気づいてない」と言ってます。
リンカーンは教会や聖職者を公然と批判した。
選挙の時不利だからやめろと言われてもやめなかった。
批判したけど教会にはまじめに通った。
リンカーンの演説が格調高い名文で、聞くものを引き付ける名調子であったことは有名ですが、著者によればそれは歴史上有名な名演説とは比べ物にならないレベルのものだった。
比べられるとしたらシェイクスピアなどの劇に出てくる演説だけだと言ってます。
リンカーンは厳しさと優しさをあわせ持っていた。
南部の合衆国からの分離に対しては、話し合い解決を主張する政治家も多かったがリンカーンは戦争しかないと腹を決めていた。
しかし戦争中から和解と南部再建について真剣に考えていた。
北部では戦争が終わったら南部の指導者は全員縛り首というのが多数意見だったがリンカーンは「南部再建支援のために200万ドル!」と提案して周囲を唖然とさせた。
リンカーン暗殺はイギリスにも大きな衝撃を与えた。
新聞などに哀悼の辞があふれたけど著者にとって印象に残ったのはふたつ。
ひとつはビクトリア女王がリンカーン夫人に送った「夫を亡くした女から夫を亡くされた方へ」という手紙。
アメリカ人が喜んだそうです。
もうひとつは有名な風刺漫画雑誌『パンチ』の編集長の言葉。
世界の政治家や権力者を冷やかしまくりおちょくりまくってきた『パンチ』の編集長が実に丁重に「冷やかしまくりおちょくりまくったことをおわびいたします」と書いたんです。
著者は前代未聞のことだと感動してます。
イギリスとアメリカ、国は違えどリンカーンは英語国民が生み出した最高の人物であるというのが著者の結論です。