若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

人民の人民による人民のための政治

白内障手術後の老眼鏡ができたのでゴドフリー・ベンソン著『アブラハム・リンカーン』(1916)再開。

 

ややこしい英語でなかなか進めなくていらいらしてる私をあざ笑うかのように著者は非常にくわしい「南北戦争史」を書きだした。

著者が「くわしく書きます」と宣言してるのでしかたない。

しかたないけどますます進まない。

 

北軍と南軍の軍人の名前がぞろぞろ出てきて誰が誰やらわからん。

州名や地名や山の名前や川の名前もぞろぞろ出てきて州名くらいはわかるけど地名や山や川となるとどこがどこやらわからん。

結局誰と誰がどこで戦ってるのかどっちが勝ったのかさっぱりわからん。

これで読んだと言えるのか。

言えないと思う。

 

徒労感にぐったりしてるところへ「人民の人民による人民のための政治」登場!

 

待ってました!と叫びたくなる。

 

1863年、激戦の地ゲティスバーグに軍人墓地が作られることになった。

戦争はまだ続いてます。

リンカーン大統領が出席してあの有名な演説をする。

 

軍人墓地開設式典の記念演説を頼まれたのはエドワード・エバレットという人でリンカーンはその演説のあとで「短くあいさつお願いしますネ」と言われてたんです。

 

大統領の演説は付け足しだった。

なぜか。

エドワード・エバレットは当時アメリカ合衆国最高の演説家と言われてたんです。

 

13歳でハーバード大学入学!

牧師でもあり学者でもありアメリカ人として初めてドイツの博士号を取得フランス語ドイツ語ギリシャラテン語に堪能でハーバード大学教授としてギリシャ文学を教えハーバード大学学長、上院議員、下院議員、国務長官、駐イギリス特命全権公使マサチューセッツ州知事などを歴任、南北戦争がはじまると奴隷解放大義を訴えて北部を演説して歩き行く先々で聴衆を感動の渦に巻き込んだ。

 

で、この人に「ゲティスバーグ軍人墓地設立準備委員会」が開設記念式典での演説を頼んだ。

文句あるか!

ありません!

 

頼まれたエドワード・エバレットが喜んで二つ返事で引き受けたと思うのは素人の浅はかさ。

 

「式典まで2か月しかないではないか!2か月で演説の準備ができますか!」

 

どやされた準備委員会が開設式典を2か月遅らせたというんですからこの人の偉さがわかる。

アメリカ合衆国を代表する雄弁家が4か月かけて準備した演説。

これは長くなる!と思って大統領には「短くお願いします」と言ったのではなかろうか。

知らんけど。

 

長かった。

2時間みっちりしゃべりはった。

 

準備に4か月かけた演説は古代ギリシャのマラソンの戦いから始まってばら戦争30年戦争、南北戦争はいつ出てくるという感じで2時間。

 

リンカーンの秘書が「完璧!」というほどの出来だった。

 

その大演説の後、「短くお願いします」と言われたリンカーンの演説の締めくくりが「人民の人民による人民のための政治」。

こっちは約2分で歴史に残る演説になった。

スピーカーもないし会場を埋め尽くした大聴衆にはよく聞き取れなかったようですが。

 

エドワード・エバレットはリンカーン宛に「私の2時間の演説が大統領閣下の2分の演説の足元にも及ばないのはお恥ずかしい限りです」と手紙を書いたそうです。