キンドル無料本です。
先日読んだエドワード・モースの『日本その日その日』に続いて、たまたま無料本一覧表から見つけて読んだんです。
適当に選んで続けて読んだこの2冊にまさか共通点があるとは思わなかった。
『比島投降記』を読み終わってから、ネットで石川欣一さんについて調べて驚いた。
石川さんは『日本その日その日』の訳者だったんです。
何たる偶然であろうか。
石川欣一(1895~1959)、東大卒、プリンストン大学留学、毎日新聞入社、ロンドン支局長などを歴任。父が動物学者でエドワード・モースの教えを受けた縁でモースの手記を訳した。
石川さんの『比島投降記』は、「アメリカの軍人はえらかった、いい人ばかりだった」という内容です。
読んでいて「いくらなんでもちょっとほめ過ぎなんじゃないの」というくらいほめてて、石川さんも気にして「ほめ過ぎと思うでしょうけど、ほんとのことなんだからしかたない」と断ってます。
読んでて「モースの日本人びいきと似てるな」と思いました。
お二人の「人徳」の賜物なんでしょう。
日本人をほめるのもアメリカ人をほめるのも気持ちいいと思いました。
石川さんはフィリピンで記者活動中敗戦。
捕虜収容所に収容されて所長の通訳として活動した。
捕虜が3千人ほどで、所長は若くハンサムなハーバード大学の医学生だった。
所長は「自分の任務は捕虜を無事故郷に送り届けることだ」と言ってマラリア対策などに心を砕いてくれた。
それに引き換え日本人軍医は、と石川さんは憤ってます。
アメリカ軍に米が余ってるのでほしければ分けてやるというので喜んだ。
もらった米を炊いていた日本兵が石川さんを呼びに来た。
アメリカ兵が横から何かうるさく言うんだけど何を言ってるのかわからない。
アメリカ兵は石川さんに「米を炊くのに調味料を使ってない。砂糖でも塩でも牛乳でもなんでも分けてやると伝えてほしい」
「日本人は調味料を使わない」
「そんなもの食べておいしいのか」
若いメキシコ系アメリカ兵が日本兵を見ながらぶつぶつひとりごとを言ってた。
「あいつはぼくを殺したかったわけじゃない。ぼくもあいつを殺したかったわけじゃない。えらいさんが戦争を始めて殺し合うことになってしまったんだなあ」
石川さんがこの本を書いたのは昭和21年です。
捕虜収容所の食事が良かったことを繰り返し書いてます。
捕虜にも兵士用の携帯食が出た。
朝食、昼食、夜食、デザート、コーヒー、タバコと至れり尽くせりだった。
こう書いてから、「食糧難の最中にこんなことを書いて申しわけない」と謝ってます。