きのう、NHKの「クローズアップ現代」で、恐ろしい地下洞の話を取り上げていた。
大日本帝国陸海軍が、さまざまな目的で掘った地下洞だ。それが全国に何千も残っているそうだ。
その上に建った家を買って、穴が崩れて住めなくなった人もいる。
国は、そういう穴は国のものではない、と言っている。それぞれ所有者があるから所有者が処理すべきで、補助金は出しましょうということのようだ。
土地の所有者は、帝国陸海軍が掘ったのだから国が処理すべきだと言っている。
帝国陸海軍が掘った穴は誰のものか。
わかりません。
常識的には、国が処理すべきものと思いますが。
と言って、国土交通省の課長が、「よっしゃ!国でやろう!」と叫んで決まるわけではない。
日本は法治国家だ。
こういう穴に関する法律はあるのだろうか。あったとしても穴だらけの法律かもしれない。
きのうの記者会見で、この問題について質問された小泉首相は、「国としてこれまで放置してきたことは遺憾ですね。恥ずかしいことです。穴があったら入りたいですネ」と答えた。
それを受けて、国土交通省では、全国の地下洞を調査した上、首相を入れる穴を早急に選定する作業に取り掛かった。
首相一人を穴に入れるわけにはいかない。
不肖若草鹿之助もおつきあいします。
私が入る穴は、ほら穴です。
フィリピンで日本兵が発見されたという報道にも驚いたが、「残留兵」という言い方には違和感を感じる。
残った人もあるだろうが、とり残された人がほとんどだろう。
「残置兵」「置き去りにされた兵隊さん」と言うべきだ。
インターネットで初めて知ったことの一つに、「山西省残置兵問題」がある。敗戦時、山西省にいた陸軍部隊のえらい人が、自分たちが戦犯にならず早く帰国できるよう、部下に、国民党系の軍閥に協力して共産軍と戦うよう命令した事件だ。
命令に従って戦った兵たちは多数の死傷者を出し、共産軍の捕虜になって、長年帰国できなかった。
命令を出した偉い人たちは、さっさと帰国して、自分たちが命じたのではないとうそをついたので、兵士たちは「終戦後も勝手に戦っていた脱走兵」扱いになって、軍人恩給ももらえないということだった。
戦後処理は終わっていないではないか。
ほら穴もこわいが、やはり人間がこわい。
人間の中ではえらい人がこわい。