若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

さだまさしは訴える

朝日新聞に、さだまさしさんが若者に向けて書いている。

要約すると、「私たちのような世界にも例を見ない、浅ましく恥知らずで愚かな大人に育てられた君たちが気の毒でならない。お詫びするとともに、どうか私たちを反面教師としてすばらしい未来を作ってください」というもので、「お願いだ。お願いだ。お願いだ」と、三度繰り返して終わっている。

モダン演歌の旗手、さださんらしい名文だが、にっこり笑っている写真が出ているのには首をひねらざるを得ない。
身もだえして伏しまろび泣き叫ぶさださんの写真がほしいところだ。

とにかく楽しい文章で、「理想」「打ち砕かれ」「敗北感」「挫折感」「こいねがう」など、モダン演歌特有の言葉がちりばめられている。
終わりの部分の盛り上がりはなかなかのものだ。

「友人を大切にし、礼節を重んじ、学歴を妄信せず」に始まる、守るべき十五か条の道徳的倫理的項目を挙げている。
それはいいのであるが、「これだけのことで君の未来は明るく拓けるだろう」は解せない。

十五か条ですよ!十五か条をずらずら並べ立てて「これだけ」とは?
せめて「三つのお願い」くらいにまとめた方がいいと思います。
「『国とは国語なり』だ」と断言するさださんにしては、言葉の使い方が雑だ。

私がさださんを知ったのはかなり昔だ。
レコード店でレコードを探していた時、店内に歌が流れ出した。
その歌詞を聞いたとき、私は「なんじゃこれは!」と、恥ずかしさと怒りが入り混じったような感情に襲われた。

歌のタイトルも歌い手の名前もわからなかったが、しばらくして新聞で「さだまさしの『関白宣言』がヒットしている」という記事を読んで、あ、あれだな!と思った。

歌を聞いて腹が立つことは少ない。
三波春夫さんの、戦争で息子を亡くした老夫婦を歌った曲。
「一人息子を亡くしたと 愚痴は言うまいばあさんや 二人亡くした人もある」
なんじゃこれは。

さださんに腹を立ててもしかたがない。
さださんはうまくやったのだ。
ヒットさせた方に腹を立てるべきかもしれん。

さださんが友人の結婚披露宴に招かれた時の話を読んだことがある。
一曲歌ってほしい言われて、エレクトーンの伴奏で自分のヒット曲を歌ったのだが、伴奏の女性が、前奏がすんだところでさださんに「ハイ」と声をかけたというのだ。

この話が好きなので、さださんを許します。