朝の電車。
いつものように本を読んでました。横で、女子高生が二人、にぎやかにしゃべってる。
「・・・クーデター・・・ヘリコプター部隊・・・」
おや、女子高生の会話にしては?と思って見ると、時々見かけるA子さんとB子さんでした。この二人、いつもA子さんが、自分が読んだ漫画のストーリーをしゃべりまくり、B子さんが熱心に聞いてるのです。
今日の物語は、某国の皇太子がクーデターを計画して、その計画を記録したフロッピーディスクが盗まれて、という話らしい。
いつにない熱演であった。熱演が熱い反応を呼ぶのであった。そして、熱い反応が一層の熱演を呼ぶのであった。
「ヘリコプター部隊で襲撃してんけど、アタッシュケースにはフロッピーがなかってん!」
「え〜っ!最悪!」
「それで、皇太子は・・・」
「静かにしてください!」彼女たちの横で新聞を読んでたおじさんが言った。
A子さんは、ぺロッと舌を出して
「二回目!」と言いました。
熱演と熱い反応と言えば。
数年前、PTAの役員をしていた時、浜村淳さんの講演を聞きに行ったことがある。
浜村さんは、会にふさわしく、教育問題を取り上げられた。かわいそうな小学生の男の子について話された。中身は忘れたが、とにかくかわいそうな男の子なのであった。浜村さんは、繰り返し、「かわいそうな子なんです!」と力説されるのであった。
話がはじまってしばらくした時、私は、自分の席の近くで、何か音がするのに気づいた。小さな音であるが、断続的に聞こえる。人間の声のようでもあった。
大きい音ではないが、途切れ途切れに、ずっと聞こえるのである。気になるのである。浜村さんはやりにくいだろうな、と思った。
何の音かと、音のするほうを見た。
少し離れた席に、私くらいの年の男性が座っていた。その人が、泣いていたのである。鼻をすする音だったのである。
浜村さんの話に、熱が入ってきたように思った。
鼻をすすっていた男性は、しゃくりあげて泣きはじめた。
さすが一流の話術であると思いました。