若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

ソンツェンガンポとタイコンデロガ

 「ソンツェンガンポ」を知っている人は少ないであろう。

 受験生時代、某予備校に通っていた友達の下宿へ行った。
彼は、予備校の世界史の問題を見せてくれた。難しかった。7世紀にチベットを統一した王様の名前を書けという問題があった。バカバカしい問題だと思った。誰が知るか!
 答は、ソンツェンガンポ王であった。

 約20年後、私は銀行で「アサヒグラフ」を読んでいた。チベット紀行であった。洞窟に安置された二体の仏像の写真があった。実に美しい像であった。チベット風に鮮やかに彩られた、絶世の美男美女であった。
 記事を読んで驚いた。それは、今なおチベットの人々の信仰を集めるという、ソンツェンガンポ王と王妃の像なのであった。
 私は感激した。感激のあまり、古来チベット仏教に伝わるという「五体投地の礼」を敢行!銀行内を転げまわったのであった。

 「タイコンデロガ」を知っている人は少ないであろう。

 大学時代、ベトナム戦争の真っ最中であった。
新聞に「空母イントレピッド出動」などという記事がよく出た。私は英和辞典で調べた。「INTREPID:恐れを知らない、勇猛な」
 なるほど、と私は納得した。
「空母エンタープライズ出動」英和辞典で調べた。「ENTERPRISE:企業心、冒険心」あまり納得できなかった。

 そして「タイコンデロガ出動」の記事である。英和辞典で調べようとしてハタと困った。つづりは?適当に調べたけれどわからなかった。大きな辞典で見てもわからなかった。
 ふつうの言葉ではないな、と思った。恐竜とか、人食い植物とかの名前ではないか?そういう方面も調べたけれどわからなかった。
 わからないうちに、ベトナム戦争は終わった。

 約20年後、私は、アメリカ史の本を読んでいた。独立戦争のところを読んでいた私は、アッと声を上げた。出た!「タイコンデロガの戦い」
 タイコンデロガ砦で、植民地軍が大敗したと書いてあった。地名だったのである。ふつうの言葉ではないと思った私のカンは当たっていたのである。アメリカの軍艦の名前には地名が多いのだから、地名で調べるべきであったと、深く反省した。
 
  ソンツェンガンポとタイコンデロガ。
我が人生で忘れえぬ二つの言葉である。私が死ぬ時、ひょっとするとこの言葉を口にするかもしれない。疑問に思うかも知れぬ妻と子のために、ここにその由来を記すものなり。