若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

野口榮子著『ディドロと美の真実』

ディドロという人は、18世紀フランスで『百科全書』を作った人だということだけ知ってました。

「元祖百科事典」かというと、「元祖」の前には「本家」があり、「本家」の前には「総本家」というようなことのようです。
ディドロは、イギリスで出た百科事典のフランス語訳を頼まれて、よっしゃ!フランスでも作ろう!と思ったのです。

で、このイギリスの百科事典が、「サイクロペディア」というんですが、百科事典て「エンサイクロペディア」じゃないのか?
「サイクロペディア」と「エンサイクロペディア」の関係は?と思って調べてみました。

ランダムハウス英和大辞典を見たら、「サイクロペディアは、エンサイクロペディアの頭音消失形」と書いてありました。
「そうどすか」という他ない説明だと思いました。

さて、ディドロという人は、美術批評にも力を入れていたようで、いいこと言ってるようなのでこの本を買いました。
自分の目と頭を信じて、思ったままに語るという感じです。
えらい人だと思いました。

自分の肖像画についても素直に語ってます。
「描いてくれた画家のことは愛しているが、私は真実の方をもっと愛している。この絵は若すぎる。顔が小さすぎる。美しすぎる」

私がこれまで描かせてもらった人達も、こんなふうに思ってるかもしれない。

この本には、当時の絵にまつわる面白い話がいろいろ出てきます。
けったいな注文者も出てきます。

昔、絵は注文を受けて描くものだった。
私みたいに、注文もないのに描くと、置き場に困ることになる。

この本に取り上げられてる画家の中に、フラゴナールがいます。
有名な人で、今でも複製画が売られてるくらいだから、当時は大人気だったでしょう。

フラゴナールの「ぶらんこ」という絵は、美術全集などで見ることができます。

若い女性がブランコを大きく揺すってて、翻ったスカートから足が出てる。
繁みに潜んだ男がスカートのあたりを見上げてる。

こんな絵を描くなんて、フラゴナールというのは、ちょっとエッチな画家なのだと思ってました。
この本を読んでびっくりしました。

この絵は、ジュリアン男爵という人が注文したんです。
「自分を画面の中に描き、美しい貴婦人の足を見ているところ、できればもう少し奥まで見えるように描いてほしい」

こう注文したんだそうです。
なんという注文であろうか。

フラゴナールは、注文通り、赤い靴下留めが見えるところまで描いたのです。

長年、フラゴナールのことを、ちょっとエッチな画家と思ってたことをお詫びします。
誤解がとけただけでもこの本を買ってよかったです。